これまでの検討から、RGD修飾リポソームは未修飾リポソームに比べ、脾臓への高集積を示したた。このため、新たにRGD修飾量を減らしたRGD修飾リポソームを合成した。昨年までの検討から、これらの新規リポソームはαvβ3インテグリンに対して結合親和性を保持していることが分かった。本年度は各リポソームの体内挙動を、担癌モデルマウスを用いて検討した。 111Inでの標識はこれまで同様、アクティブローディング法により行い、高い収率(80-90%)で111In封入リポソームを得ることができた。111In封入リポソームを74 kBq/umol lipid/100uLとなるように生理食塩水で調整し、PANC-1(ヒト膵癌細胞)皮下移植マウスに投与した。一定時間後の組織重量集積率を算出した。その結果、RGD修飾量の低下に伴い、血中放射能量は高く、血中滞留性が確認された。また、腫瘍への集積もRGD修飾量の低下に伴い、増加する傾向が見られた。しかし、腫瘍血液比や腫瘍筋肉比を比較した結果、RGD修飾量を下げ過ぎると、血液滞留性が上昇するため、腫瘍血液比が1以下になることが分かった。以上体内分布の結果より、RGD修飾リポソームを内照射薬剤として用いるためには、腫瘍集積量の向上を含めた体内動態の改善が必要であることが分かった。今後は、異なる組成やPEG以外の修飾を施したリポソームの開発が必要である。
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