研究課題/領域番号 |
24591831
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
細川 洋一郎 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (70173599)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 4-メチルウンベリフェロン / 放射線 / 抗癌作用 / 転移 / 浸潤 |
研究概要 |
平成24年度の実験計画に従い、細胞への放射線照射、4-メチルウンベリフェロン(MU)暴露による細胞死の検討を行った(実験1)。次に、25年度実験計画にあるMUによる浸潤能の抑制を検討した(実験2)。 (実験1) ヒト線維肉腫細胞(HT1080)および正常細胞対照として肺線維芽細胞(WI38)を播種し、培養液のMU濃度を0.02-0.14mMに調整し、細胞死を観察した。その結果、HT1080では0.1mMから細胞死による生存率の低下が観察されたが、WI38では0-0.14mMにおいて生存率低下は観察されなかった。次に、放射線照射2Gy、MU濃度を0.1mMにし、対照、放射線単独処理、MU単独処理、放射線併用MU処理で実験し生存率の比較をおこなった。その結果、WI38では対照とMU単独処理、放射線単独処理と放射線併用MU処理の間に生存率の差はみられなかったが、HT1080ではMUを添加したほうが、有意に生存率が減少していた。この結果はMU投与が、正常細胞に比較して悪性腫瘍細胞の細胞死をもたらすこと、すなわち、抗腫瘍作用があり臨床的に適当な薬剤であることを示している。また、その効果は放射線と併用しても有効であることが判明した。 (実験2) BD-Biocoatマトリゲルインベージョンチャンバーを使用し、浸潤能の違いを検討した。浸潤能を評価する指標として、マトリゲルを通過した細胞数を数え、浸潤能を算出した。その結果、対照とMU単独処理、放射線単独処理と放射線併用MU処理でMUを添加したほうが、浸潤能は低く、特に、放射線を照射した場合においてその差は顕著だった。この結果はMU投与が、悪性腫瘍細胞の浸潤能を低下させ、転移を防止する可能性を示唆するとともに、放射線照射の場合に特に有効であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先にも記載したように、平成24年度の実験計画に従い、細胞への放射線照射、MU暴露による細胞死の検討を行った(実験1)。実験1の結果より、MU投与が、正常細胞に比較して悪性腫瘍細胞の細胞死をもたらすこと、すなわち、抗腫瘍作用があり臨床的に適当な薬剤であることを示しており、また、その効果は放射線と併用しても有効であることが判明した。従って、MU併用による臨床的適応性が担保されたと考えている。 次に、フローサイトメーターによる細胞死の機能解析に代え、25年度実験計画にあるMUによる浸潤能の抑制を検討した(実験2)。本研究はMUによる転移抑制が主眼であるので、その確認をすることが急務だと考えたためである。そして、その実験結果は、MU添加により浸潤能が低下し、しかも放射線照射でその傾向が示されており、研究遂行の妥当性を確認することができた。以上より、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(実験3)平成24年度の実験で、MU処理を行ったとき、放射線照射時にも浸潤能が低下することを示した。しかし、浸潤能を低下させる機序が、MU処理によって引き起こされるヒアルロン酸低下によっているかは確認していない。少なくとも、MU投与によりヒアルロン酸の低下が起こっているかは確認する必要があると思われる。そこで、腫瘍細胞HT1080のアッセイ系(対照、放射線単独処理、MU単独処理、放射線併用MU処理)でMU投与によりヒアルロン酸が低下しているかELISAにより確認する。 (実験4)MU処理を行った場合、浸潤能が低下しており、その機序を確認するために、(実験3)のアッセイ系をつかい、その上澄を採取し、ザイモグラフィーを行う。ザイモグラフィーを行うことにより、MMP(matrix metalloproteinase:マトリックス分解酵素)細胞外基質を分解する酵素を検出する。
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次年度の研究費の使用計画 |
培養および試薬 40万円 (血清、培養液、抗生剤、PBS、その他の試薬) ディスポ実験器具 30万円 (遠沈管、ピペット、マイクロチューブ等) ヒアルロン酸定量ELISA 40万円 (8万円×5個) ザイモグラム電気泳動キット 30万円 (6万円×5個) その他 謝金5万円 調査旅費25万円
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