研究課題/領域番号 |
24591831
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
細川 洋一郎 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (70173599)
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キーワード | 4-メチルウンベリフェロン / 放射線 / 抗癌作用 / 転移 / 浸潤 |
研究概要 |
平成25年度の実験計画に従い、HT1080細胞へ放射線照射および4-メチルウンベリフェロン(以下MU)暴露により、ヒアルロン酸の増減(実験3)およびmatrix metalloproteinase(マトリックス分解酵素 以下MMP)(実験4)の検討を行った。ヒト線維芽細胞(HT1080)を播種し、サブコンフルエントの状態でMU(0.1Mまたは0.5M)投与およびX線(2Gy)照射を行い、対照群、DMSO群、MU群、照射群、照射+DMSO群、照射+MU群の6群を作成し結果を検討した。 (実験3)処理24時間後の培養上澄中ヒアルロン酸濃度をHyaluronan Quantikine ELISA Kitで測定し比較検討した。その結果、対照群およびDMSO群に比較して、MU投与群が有意に低かった。また、照射群および照射+DMSO群に比較して、照射+MU群では、上澄中のヒアルロン酸濃度は有意に低かった。 (実験4)処理24時間後の培養上澄みを採取し、MMP2およびMM9のザイモグラフィーを行った。その結果、MMP2ならびにMM9ともに、照射、非照射に関係なく、MUを添加するとゲルの溶解性が低下していた。 これらの結果より、MUを添加すると、放射線照射を行ってもヒト線維肉腫細胞のヒアルロン酸産生が減少し、細胞外マトリックスの融解能が低下し、癌細胞の転移抑制に有効であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の実験計画に従い、MU投与によるヒアルロン酸の産生能の増減およびザイモグラフィーによるMMP2およびMMP9の活性化の実験が終了した。その結果、予想していた通りの結果が得られ、MUを投与すると、放射線照射の有無にかかわらず、ヒト線維肉腫細胞(HT1080)のヒアルロン酸の産生能が低下した。また、MMP2およびMMP9の細胞外基質の融解性が低下していると考えられる。これらの結果より、放射線照射した場合でも、MUは有効な癌転移抑制剤として働くことが示唆された。また平成26年度はPCRによる遺伝子レベルの発現も検討している。以上より、順調に実験は進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の実験でMU投与によりMMP2、MM9の作用低下が確認された。また25年度はPCRにより、MMPを含め、転移抑制系の遺伝子レベルの発現について、一部、検討した。しかし、この方法は効率が悪かったので、本年度は、MUを投与することにより、さらに広範な転移抑制の作用機序をDNA網羅解析により検討する予定である。具体的実験方法としては、照射した場合のMU処理をおこない、その細胞をDNA array を行いMU投与によるDNA発現の変化を調べる。次に、追跡された遺伝子をPCRで定量的な変化を検討し、定量的な発現変化に言及する。以上の結果を国際学会で発表し、論文の投稿を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験計画にも書かれていたように、最終年度にDNA網羅的研究をおこない、国際学会で発表するため、高額の経費が必要になる。このため、初年度に恒常的に使用する培養試薬の、まとめ買いを行った。また、試薬が無駄にならないように、同一実験は比較的短期間に行い、使用できる試薬等はできるだけ長期使用した。また、研究結果の信頼性を高めるため、予備実験的な結果の学会発表は控え、地元の国際シンポジウムで発表を行った。以上のような理由で、経費を持ちこし、研究成果の発表を行うこととした。 試薬 20万円 (血清、培地、培養液。PBS その他試薬), ディスポ実験器具 20万円(遠沈管、ピペット、マイクロチューブ等), 海外発表旅費 80万円 19th World Congress on Advances in Oncology, DNA array器具 80万円, 論文校正費および投稿費 20万円
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