ヒト線維肉腫細胞HT1080に対し、放射線と併用した場合の4-メチルウンベリフェロン(MU)の効果を検討するため、DMSO単独投与群 (D群)、MU 0.1 mM単独投与群 (M群)、2 Gy + DMSO投与群 (DR)群、2 Gy + MU 0.1 mM投与群 (MR群)についてcDNA網羅解析を行った。mRNAの発現がD群と比べて2倍以上の増減を示した分子の数は、M群: 2270、DR群: 6144、MR群: 3848だった。これらの変動した分子を既知の生物学的パスウェイに当てはめたところ、Interleukin 6 (IL-6) signalingが各群で共通して変動があり、M及びMR群において不活化傾向を示し、DR群で活性化傾向を示した。また、IL-6 signalingに関わる分子としてM及びMR群で下方制御、DR群で上方制御される分子はいずれもInterleukinでIL-1α及びβ、IL-36α及びγ、IL-37だった。Interleukinは炎症に関わる多種多様なサイトカインであり、癌細胞においては増殖や転移、浸潤と関わっているとの報告が多数ある。特にIL-6 signalingが活性化している癌細胞は、放射線によるダメージをDNA修復関連タンパクの発現により回復し、放射線抵抗性となる。以上のことから、MUと放射線を併用した際のクローン形成能及び浸潤能の減少は、MUによるInterleukin抑制効果によるものではないかと考えられた。
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