研究課題/領域番号 |
24591832
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
石川 仁 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (70344918)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放射線治療 / 抗腫瘍免疫 / サイトカイン / 陽子線治療 |
研究概要 |
放射線照射による宿主の免疫応答が局所効果に有益となり得るかについてin vivoの系で検討した。TCD50を決定するために、C57BL6雄マウス76匹の左大腿に1x106個のマウス悪性黒色腫細胞株を移植し、7-8mm大の結節に増大した時点で1回照射20-50Gy施行した。次に、新たな10匹の移植腫瘍に算出された TCD50の線量を照射し腫瘍制御について確認するとともに、移植前、照射直前、照射10日後、28日後に血清を採取した。また、28日目の時点で脾を摘出し、血清と脾細胞培養液中のGM-CSF、 IFN-γ、TNF-α濃度をELISA法を用いて測定した。結果として、得られたTCD50は40Gyであった。この線量を10匹のマウスに照射した結果、5匹で局所制御が得られた。脾細胞48時間培養液中のGM-CSF、IFN-γおよびTNF-α濃度は腫瘍非制御群では 23.7 ± 13.0 pg/ml, 0.6 ± 0.6 pg/ml, and 13.1 ± 5.6 pg/mlあったのに対し、腫瘍制御群で37.8 ± 10.1 pg/ml, 5.4 ± 6.9 pg/ml, and 21.2 ± 6.6 pg/mlと高値であった。IFN-γの2群間での差は有意であった。同様に28日後の血清IFN-γ値も非制御群0.9 ± 0.7 pg/ml に対し、制御群で12.0 ± 18.7 pg/mlと 高値であった。以上から、マウス悪性黒色腫の局所照射はサイトカインが誘発され、とくにIFN-γの上昇は局所効果と関連がある可能性が示唆された。本研究成果は2012年10月にボストンで開催された米国放射線腫瘍学会(ASTRO)および2012年11月に東京で開催された日本放射線腫瘍学会で報告した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書に記載した初年度の研究計画内容の80-90%はすでに施行し、得られたその結果の解析も行った。またその一部についてはすでに学会報告をした。現在は2年目に計画している研究に着手している。また、照射後の経時的なサイトカイン値の変動については解釈の難しいものがあったため、検体数を増やして再測定を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
悪性黒色腫が移植されたマウスで腫瘍に対する放射線照射によりサイトカインの上昇が認められ、その上昇が抗腫瘍効果と一部相関することが示された。予想に近い結果が得られているため、現在までの解析結果をもとに一部のデータについては検体数を増やして統計学的検討を施行する。次に、研究計画調書に計画したように、免疫賦活剤および抗がん剤併用時に放射線照射後の腫瘍免疫がどのように変化するか、あるいは陽子線照射時にX線照射とどのように相違があるかを本年度に行ってきたものと同様の手法を用いて検討する。以上の結果から放射線増感比あるいは生物学的効果比を検討するとともに、これらの適切なタイミングについて検討する。また、使用している悪性黒色腫細胞株はLuciferase導入株であるため、当初の研究計画調書には予定項目として記載していなかったが、現在、腫瘍効果の画像化にも着手している。 臨床的な研究としては実際に放射線照射を施行した症例のデータを用いて解析を行う。現在臨床情報についてデータベースを作成中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウス実験を遂行するために早い段階でマウスの購入、飼育費が必要である。 腫瘍細胞を培養するための培養液や培養器具の購入が持続的に必要である。 次年度に検体数を増やすため、サイトカイン測定のためのELISAキットの追加購入が必要である。 免疫賦活剤などの薬剤の購入が必要である。 得られた結果を発表し、論文化するための諸費用が必要である。
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