研究課題/領域番号 |
24591835
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
趙 慶利 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (90313593)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 温熱 / 放射線 / 細胞死 |
研究概要 |
H24年は、子宮頸癌由来のHeLa細胞を用い、温熱とTempoおよびミトコンドリアを標的とするTempo誘導体F-TriPPTとの併用によるアポトーシス(apoptosis)およびオートファジー(autophagy)様細胞死の増強とその分子機構について実験で観察して部分的に解明した。温熱(44℃/30-60分)、Tempo (1~10 mM)、 F-TriPPT (0.1~0.5 mM)単独および併用により誘発するapoptosis とnecrosisを annexin V-FITC/PI flow cytometryで検討した。形態学的変化についてGiemsa染色で、autophagy 特異タンパクLC3は免疫染色とWestern blotによって検討した。(1)温熱とTempo併用はautophagosomeをもつ特異的細胞形態を示し、autophagosome指標であるLC3抗体とWestern blotによってautophagy誘発を確認した。(2) ミトコンドリアに局在するTempo誘導体F-TriPPTと温熱の併用によるautophagyとautophagic cell deathの誘導を検討した。F-TriPPTはTempoより効果的(10~20倍)に細胞死を誘発することが分かった。 (3)関連タンパクの発現についてBax, Bcl-2とCaspase-3の発現をWestern blotによって検討した。autophagy細胞死はcaspase-3非依存性であることが分かった。(4)ヒト白血病U937細胞で放射線とTempoの併用効果を検討中で、Tempoの濃度に依存して、低濃度で放射線保護効果、高濃度では放射線増感を示すことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的を中心にして、ほぼ計画のどおりで遂行している。24年度の計画のうち細胞死の誘発と検出定量についてはほぼ完成した。Bcl-2ファミリータンパク質の活性化の確認について計画どおりである。その他の計画についてもほぼ計画どおり実施できている。したがって、現在までの達成度は95%以上と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度研究について以下のどおりで遂行する。 1. Caspaesの活性化・不活性化の検出 (1) Apoptosisにおいて、initiator caspses-8, -2と-9のどの分子の活性化がeffector caspase-3を活性化させるかを生化学的に確定する。 (2)併用ではニトロキシドがcaspasesの活性部位SHを酸化し、すべてのcaspasesを不活化することが予測され、mitochondrial dysfunctionがapoptosisをautophagic cell deathにスイッチすることを確認する。 2. Mitochondrial permeabilization (MOMP) とcytochrome c (Cytc)の遊離 (1) apoptosisを誘発する単独と併用の系で、Baxのmitochondria (MT)への転位によるCytc遊離を確定する(Western blot, 免疫染色)。(2)併用によるnon-apoptotic cell deathにおいて、Bax/Bakの活性化、tBid生成、MOMPによるCytc遊離がおこるか、否かがapoptoticとnon-apoptotic deathの分別に重要であるので、生化学的手法と免疫染色で確定する。 3. MTのETC電子伝達とATP合成は生理的に必須である。(1)MTの機能低下の指標としてのミトコンドリア膜電位(H+勾配)はTMRMで検出する。HeLa細胞において併用時にzVAD-fmk抵抗性ミトコンドリア膜電位消失をおこす可能性を検討する。 (2)機能障害の指標としてのATP量の測定:apoptosis, necrosis とautophagy細胞の細胞のATP量を測定し、MT機能障害と細胞死の関係を見る。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度においては、アポトーシス検出用試薬の使用量が少なかったため、計画よりも約20万円分少ない研究費で研究を実施した。その分を平成25年度のアポトーシス検出用試薬の購入に充てることにしている。してがって、平成25年度の研究費は、消耗品費110万円、旅費30万円、人件費(実験補助)10万円、論文投稿料10万円で、合計160万円の予定である。
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