研究実績の概要 |
本研究では、がん細胞を用い、温熱とTempoおよび特異的にミトコンドリアに局在するTempo誘導体F-TriPPT(Fluorescein triphenyphosphonium Tempo)との併用によるapoptosis, necrosis及びautophagic cell death誘発分子機構を明らかにすることを目的とした。子宮頸癌由来のHeLa細胞を用いて、温熱とTempoおよびミトコンドリアを標的とするTempo誘導体F-TriPPTとの併用によるアポトーシス(apoptosis)およびオートファジー(autophagy)様細胞死の増強とその分子機構検討した。温熱(44℃/30-60分)、Tempo (1~10 mM)、 F-TriPPT (0.1~0.5 mM)単独および併用により誘発するapoptosis とnecrosisを annexin V-FITC/PI flow cytometryで検討した。形態学的変化についてGiemsa染色で、autophagy 特異タンパクLC3は免疫染色とWestern blotによって検討した。(1)温熱とTempo併用はautophagosomeをもつ特異的細胞形態を示し、autophagosome指標であるLC3抗体とWestern blotによってautophagy誘発を確認した。(2) F-TriPPTと温熱の併用による顕著なautophagic cell deathを誘導した。F-TriPPTはTempoより効果的(10~20倍)に細胞死を誘発することが分かった。 (3)関連タンパクの発現についてBax, Bcl-2とCaspase-3の発現をWestern blotによって検討した。autophagy細胞死はcaspase-3非依存性であることが分かった。(4)ヒト白血病U937細胞で放射線とTempoの併用効果について、Tempoの濃度に依存して、低濃度で放射線保護効果、高濃度では放射線増感を示すことが分かった。複数の癌細胞(U937, Jurkat-T, Molt-4, THP-1, HL-60とHeLa)を利用して、それぞれ温熱単独およびニトロキシドとの併用処理後、細胞死およびHSPsタンパク質の発現を調べた。HSP70とHSP27の発現は癌細胞によって異なることが判明され、HSP27, HSP70と細胞死感受性の相関性も部分的に判明した。
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