研究課題/領域番号 |
24591836
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
高仲 強 金沢大学, 大学病院, 准教授 (00216673)
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研究分担者 |
熊野 智康 金沢大学, 大学病院, 助教 (20377386)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 呼吸移動性腫瘍 / 回転型強度変調照射 / 画像誘導放射線治療 / 呼吸停止下照射 / 留置金属マーカ |
研究概要 |
研究課題である回転型強度変調照射法を用いて呼吸停止下にて放射線治療を施行した症例は研究初年度の平成24年から平成25年3月において原発性および転移性肺癌5例、縦隔リンパ節転移3例、原発性および転移性肝癌5例、肝内胆管癌2例、膵臓癌3例、上腹部(膵頭部)リンパ節転移1例の合計19例であった。研究課題としての呼吸停止下照射は、進展型肺癌および縦隔リンパ節転移例では横隔膜を、末梢性肺癌また上腹部腫瘍では腫瘍近傍に留置した金属マーカを呼吸停止の位置指標として施行した。今年度はこの体内金属マーカの留置法についても検討し、当院に設置されているCT透視装置を用いたCT透視ガイド下にて安全で確実な留置法を開発した。 照射は、照射装置であるElekta Synergyに搭載されている画像誘導放射線治療機能の一つである透視機能を用いて、照射計画画像の横隔膜あるいは留置した体内金属マーカの位置に一致させて呼吸停止にて行った。この際の呼吸停止は、患者の呼吸停止可能時間にあわせて、毎回の照射を分節化して照射した。照射線量は、原発性肺癌の3例、肝転移の1例では定位照射として50Gy-66Gy/5fr-11frの照射を施行し、他は通常照射として50Gy-70Gy/25fr-30frの照射を施行した。 本年度の研究を通じて、強度変調照射の最新照射法である回転型強度変調照射法の肺癌や腹部腫瘍など呼吸性移動の大きい腫瘍に対しても有効に適用できること、またその施行のために画像誘導放射線治療を用いて、横隔膜や体内留置金属マーカを呼吸停止の位置指標として呼吸停止下にて照射することにより、呼吸性移動の大きい腫瘍であっても治療計画と誤差のない正確な位置での強度変調照射の施行が可能なことを確認した。また今回、呼吸性移動の大きい腫瘍に対する照射に体内留置金属マーカの利用の有効性も同時に確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究課題の初年度である平成24年度における到達目標は、①回転型強度変調照射法の治療計画の確立、②治療計画された回転型強度変調照射の呼吸停止下での照射法の確立、③呼吸停止照射を正確に行うための最適な画像誘導放射線治療法の確立である。 この目標達成のために、平成24年度は研究実績の概要でも述べたように、呼吸性移動の大きい原発性および転移性肺癌、また肝臓癌、膵癌などの上腹部腫瘍に対し回転型強度変調照射を開始し、平成25年3月までに19例に対し照射した。この照射例数は研究開始当初の予想を大きく上回り、これら症例を通じて肺癌や上腹部腫瘍に対して周囲正常組織を避け、腫瘍に集中的に照射する回転型強度変調照射計画の立案が可能であり、またこれら腫瘍に対しても回転型強度変調照射の適応が十分有用性があることが確認された。 一方、呼吸性移動の大きいこれら腫瘍に対して正確に回転型強度変調照射を施行するため呼吸停止下での照射を今回検討した。今回の検討では、毎回の照射を患者の呼吸状態に合わせて呼吸停止可能時間に分節化して照射することにより照射の施行が可能であった。また、横隔膜あるいは体内に金属を留置し、その金属を呼吸停止の位置マーカとして利用することによって、毎回正確な位置で呼吸停止させ照射する事が可能であった。特に、呼吸停止照射に金属マーカの利用は正確な照射に極めて有用なことも今回確認した。 今年度の研究の到達目標に①、②、③を挙げたが、上述の如くほぼ目標は達成され、また予想以上の照射例があり、当初の計画以上に研究が進展したと判定した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究は基本的には平成24年度に行った研究の継続である。すなわち、①回転型強度変調照射法の更なる有効な治療計画の確立、②治療計画された回転型強度変調照射の呼吸停止下での更なる有効な照射法の確立、③呼吸停止照射を更に正確に行うための更なる最適な画像誘導放射線治療法の確立である。平成24年度の研究にて回転型強度変調照射の計画およびその呼吸停止下での画像誘導放射線治療の基本的施行方法は確立された。しかし各疾患の呼吸停止下照射を基盤とした時の最適照射線量、全回転照射か部分回転照射か、病変に対する最適なマージン設定などは今後の検討課題である。また、呼吸停止照射は、1回の照射を数回に分けて照射を行っているが、分節化はどこまで可能か、その場合の照射線量は計画通りの線量が確保されているかの検討、また呼吸停止の位置指標としての留置金属マーカの有用性の更なる検討なども今後の検討課題となる。 一方、平成25年度以降は、本照射法が各疾患の局所制御率や生存率などの治療成績の向上に寄与しているかの検討が重要となる。 研究を通じて得た結果は、国際学会含めて学会で発表し、また論文化して行く予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究予定では線量測定用ファントムを購入する予定であったが、もともと施設にあるファントムで代用できたため、その購入の必要がなくなり、平成24年度の研究費に未使用額が生じた。 この未使用の研究費は、平成25年度の研究の進行において購入の必要が生じたファントムの購入に充当する。また、平成25年度では、計画された回転型強度変調照射のQA・QCを行うための放射線測定用filmの継続購入、留置金属マーカの購入、また国際学会で発表のための旅費、英語での論文化のための校閲料、またその投稿料などに使用する。
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