研究課題/領域番号 |
24591838
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
溝脇 尚志 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90314210)
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研究分担者 |
則久 佳毅 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90456898)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放射線治療 / 前立腺癌 / 定位照射 / 強度変調放射線治療 / 動体追尾照射 |
研究概要 |
前立腺癌に対する外部放射線照射療法施行中の患者において、前立腺内石灰化の三次元位置データを取得する臨床研究計画「前立腺外照射中における前立腺骨盤内移動量に関する研究」を作成し、京都大学医の倫理委員会の承認(第C594号)を得てH24年度末までに8例を登録の上データ取得を行った。現在までのデータの解析により、前立腺の動きは同一患者においても日々異なり、現在肺腫瘍の追尾照射において使用している4次元相関モデルを用いた追尾照射プログラムの適用は困難と考えられた。 過去に強度変調放射線治療で治療された前立腺がん患者205例の直腸線量を評価した結果、4年の2度以上の直腸出血頻度が、10 mm幅、5 mm幅のマルチリーフコリメータでそれぞれ、7.1%、1.8%であった。さらに、30-50Gyの線量を受ける直腸体積(V30-V50)と直腸線量中央値が、2度以上の直腸出血の有意な因子であった。 前立腺癌のα/β値、寡分割/少分割照射における腫瘍制御率と有害事象発生頻度について多方面から検討した結果、α/β値は1.5-2Gy程度の低値であると判断されるとともに、1回線量が4-5Gyを超える寡分割照射の場合、一般に用いられているLQモデルによる効果予測が必ずしも当てはまらず、LQLモデルがより適切である可能性が高いという結論に達した。これを受け、LQモデル、LQLモデルの両者でともに通常分割と比較してメリットを受け得る線量分割は、54Gy/15fr.であることを導き出した。 C594試験で取得した前立腺の照射中動きを4次元動体ファントムで再現し、照射中の前立腺の動きが与える影響をフィルム法で検証する方法を開発した。本年度は、通常の前立腺強度変調放射線治療に関する実験を開始した。初期検討の結果、同時ブーストプランでなければ、照射野辺縁以外での動きの影響は臨床上問題のないレベルであると予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前立腺癌に対する外部放射線照射療法施行中の患者において前立腺内石灰化の三次元位置データを取得する臨床研究計画「前立腺外照射中における前立腺骨盤内移動量に関する研究」を作成し、京都大学医の倫理委員会の承認(第C594号)を得て順調に症例登録とデータ取得を行っている。(H24年度末までに8例を登録) 過去に強度変調放射線治療で治療された前立腺がん患者205例の直腸線量を評価して直腸出血に影響する有意な因子を見出し、直腸有害事象に対する線量制約を求める基礎となるデータを得た。 前立腺癌のα/β値、寡分割/少分割照射における腫瘍制御率と有害事象発生頻度について多方面から検討した結果、α/β値は1.5-2Gy程度の低値であると考えるのが妥当であるとともに、1回線量が4-5Gyを超える寡分割照射の場合、一般に用いられているLQモデルによる効果予測が必ずしも当てはまらず、LQLモデルがより適切である可能性が高いという結論に達した。これを受け、LQモデル、LQLモデルの両者でともに通常分割と比較してメリットを受け得る線量分割は、54Gy/15fr.であると導き出した。 照射中の前立腺の動きが通常の前立腺強度変調放射線治療に与える影響の実験的検証を、フィルム法によるファントム実験方法を確立して開始した。 現在までの実験・検討結果から、当初本研究で臨床使用を考えていた肺腫瘍に対して臨床適用している4次元相関モデルに基づいた追尾照射技術は前立腺癌に対しては適用困難であること、同時ブーストではない寡分割定位照射においては、動体追尾照射の適用なしでも臨床上の影響が少ないことを確認でき、本研究計画中のパイロット臨床試験計画を2年目に入る比較的早期の段階で実現可能な方向に軌道修正を行えた。
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今後の研究の推進方策 |
治療中の前立腺位置移動を調べる臨床研究(C594)を研究計画通り進め、予定の20例の登録の完了を目指すとともに、既に取得した移動データの解析を並行して進める。また、当院にて強度変調放射線治療で治療された前立腺がん患者の直腸線量評価をさらに進め、新プロトコールに適応できる直腸線量制約を確立し、データの論文化を行う。 本年度開始したファントム実験を継続・推進し、データ取得および解析を進める。さらに、同時ブースト強度変調定位照射計画を立案し、同様のファントム実験を行う。それらにより、最終的に、前立腺同時ブースト強度変調定位放射線治療における追尾照射の有用性の証明を目指す。 尚、当初の研究計画では、上記研究結果を総合して前立腺癌に対する同時ブースト強度変調定位追尾照射プロトコールを立案の上、パイロット臨床試験の実施を目指していたが、C549のこれまでに取得したデータ解析の結果、前立腺の動きは同一患者においても日々異なり、肺腫瘍に対して現用している4次元相関モデルを用いた追尾照射プログラムの適応は困難と判断された。したがって、前立腺内マーカーを相関モデルなしにリアルタイムで追尾可能なプログラムの開発に別途着手したが、本プログラム開発・実用化には約3年を要する見込みであるために、当初の研究計画を次のように変更することとした。 1.本年度の検討の結果見出した、通常分割と比較していずれのモデルでもメリットが大きいと考えられる線量分割である54Gy/15fr.を採用の上、動態追尾照射なしでも臨床適用可能な同時ブーストなしの強度変調定位放射線治療プロトコールを作成し、倫理委員会による承認後にパイロット臨床試験を施行する。 2.同時ブースト強度変調定位追尾放射線治療は、ファントム実験での有用性の証明を最終目標とし、パイロット臨床試験は、新追尾照射プログラム開発後に別プロジェクトでの実施を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
肺癌に対する定位追尾照射に対応可能なモンテカルロ法による線量分布計算プログラムを改修して同時ブースト強度変調定位追尾照射の線量計算に対応可能なシステム開発と追尾照射時の各位相での線量分布を合算して線量分布を評価するためのワークステーションを購入する。 動体ファントムを用いたフィルム実験に必要な消耗品を購入する。 データ整理、解析にかかる人件費・謝金を支出する。 情報収集及び成果発表のために必要な旅費を支出する。
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