研究課題/領域番号 |
24591841
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
上村 幸司 香川大学, 医学部附属病院, 准教授 (00308199)
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研究分担者 |
安藤 裕 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 病院長 (20118904)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放射線治療 / 非線形位置合わせ |
研究概要 |
平成24年度の研究実施計画として以下の3項目があり、それぞれの研究実績の概要を示す。 ●最適な非線形位置合わせ手法の開発:The Visible Human Projectをサポートするために開発された、オープンソースの医用画像処理ソフトウェアシステムITK(The National Library of Medicine Insight Segmentation and Registration Toolkit)の非線形位置合わせライブラリを用いて、非線形位置合わせツールを開発した。また、ライブラリ関数の中で指定可能な5つのパラメータをチューニングし、精度よく位置合わせできる最適パラメータを評価した。演算時間は、パラメータの値により3分~20分の範囲で変動し、実験的に決定した最適値では13分49秒となり、実際的な速度での演算が可能だった。 ●消化管、膀胱、腎臓、血管における位置合わせの精度向上:約20例の腹部CT画像を対象に位置合わせを行った結果、着衣による体表圧迫、尿蓄積による膀胱形状の変化、食事による管腔臓器の形状変化、およびそれらにともなう周辺臓器の形状変化が、位置合わせの精度を大きく劣化させていることが判明した。また、造影や呼吸同期などの撮像条件の違いも、位置合わせの精度に影響があった。実際に、被検者のコンディションやCTスキャナの撮像条件が近い画像では、位置合わせの精度が良好だった。今後、最適な条件を検討していく。 ●位置合わせ法の評価:位置合わせの精度を視覚的・解剖学的に評価するためのビューワおよび誤差計測ツールを開発し、それらを用いてエキスパートによる精度評価を行った結果、胃や腸などの消化管とその周辺臓器をのぞいて、良好な精度で位置合わせができていることがわかった。特に、体表、骨、肝臓、腎臓などの位置合わせの精度は平均して3mm以内だった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究実施計画として以下の3項目があり、それぞれの達成度を示す。 ●最適な非線形位置合わせ手法の開発:先行研究で開発したツールと同程度の位置合わせ精度を有し、演算時間が大幅に改善された非線形位置合わせツールを開発した。 ●消化管、膀胱、腎臓、血管における位置合わせの精度向上:位置合わせ精度に大きな影響を及ぼす原因を調査した。その結果、被検者のコンディションやCTの撮像条件の違いに大きな原因があることがわかった。これらの原因を改善することで、位置合わせ精度の向上が期待できる。 ●位置合わせ法の評価:視覚的・解剖学的に位置合わせの精度評価を行った結果、上述したことに起因する消化管・膀胱などの位置ずれはあったが、それ以外の大部分の部位において、良好な精度で位置合わせが行われていた。放射線治療では一般的に3mm以内の精度を求められるが、本研究で得られた結果はほぼこれを満たしていた。したがって、我々が用いている位置合わせ手法は、おおむね妥当であると考えられる。 以上より、全体的には、おおむね順調に目的が達成されていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、被検者数を増やし、本手法の有用性を確認していく。線量分布画像の位置合わせへの応用も行う。具体的には以下のように行う。 ●DICOM-RTデータへの適用 線量分布の経時的な位置合わせは、次の手順で行う。①複数回放射線治療を行った患者の治療計画CT画像を対象に、過去画像(Source)を最新画像(Target)に非線形位置合わせし変形パラメタ情報を得る。②過去の治療計画情報のDICOM-RT Dose, Plan, Structure Set情報から照射線量を画素値にもつ、線量分布画像(Dose)を作成する。③手順①で得られた変形パラメタを用いて、過去のDoseを最新の治療計画CTの座標系に位置合わせする。④その結果をDICOM-RT形式に再変換し、DICOM-RTビューワー上で過去の線量分布を最新の治療計画CT画像に重ね合わせて表示する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度購入予定のコンピュータが予定より低価格だったため、次年度への繰越を行った。平成25年度は、成果報告のための学会出張や論文制作費用、蓄積されたデータの保管用媒体や必要な消耗品などの購入を中心に研究費を使用する。
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