研究課題/領域番号 |
24591845
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
坂田 耕一 札幌医科大学, 医学部, 教授 (10235153)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放射線増感剤 / DNA2重鎖切断 / 相同組換え修復 |
研究概要 |
オラパリブはPARP阻害剤で、DNA一本鎖切断の修復を阻害し、DNA複製分岐点を崩壊させDNA二重鎖切断を生成する。カンプトテシンは抗がん剤として使用されており、トポイソメラーゼIとDNA1本鎖の共有結合を安定化させ、一過性に作られた一本鎖切断の修復を阻害することによりDNA複製中にDNA二重鎖切断を生成する。これらの薬剤の放射線増感効果を検討し、放射線増感剤としての臨床応用への可能性を検討することを目的とした。大腸腺癌細胞株を使用し、細胞生存率を求め、γH2AXフォーカスアッセイ法により放射線誘発のDNA二重鎖切断の生成及び修復について調べた。オラパリブによる放射線増感作用は、0.01~1μMの濃度において用量依存的な放射線増感効果を認め、0.01μMのような低濃度でも増感効果が認められた。また、オラパリブ添加時間と放射線増感効果の関係をみると、オラパリブの添加時間は放射線照射後2,6,24時間において放射線増感効果に差はみられなかった。これは、オラパリブは、2時間という短時間の添加でも有意な放射線増感効果を有することを意味する。また、オラパリブはカンプトテシンの殺細胞効果も増強し、0.01や0.05μMの低濃度のオラパリブでもカンプトテシン単独と比較してカンプトテシンの増感が見られた。また、オラパリブとカンプトテシンの放射線増感効果は、放射線単独と比較して、オラパリブ併用群、カンプトテシン併用群ともに増感効果がみられ、オラパリブとカンプトテシン両者の併用群では、さらに強い放射線増感効果を認めた。γH2AXフォーカスの数は、コントロールと比較してオラパリブ単独では変化がなく、カンプトテシン添加及び放射線照射により増加した。また放射線照射単独と比較して照射にオラパリブあるいはカンプトテシンを併用した場合の方が増加し、さらに両者を併用した場合が最も増加を認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PARP阻害剤であるオラパリブを臨床応用するためのに必要な特性が進んだ。オラパリブが、臨床で達成可能な低濃度でも、放射線増感効果があることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
PARP阻害剤であるオラパリブを臨床応用するためのに必要な特性の研究をさらに進める。オラパリブが、臨床で達成可能な低濃度でも、放射線増感効果があることが判明した。様々な種類の癌細胞で、オラパリブの放射線増感について、検討する。また、正常細胞でのオラパリブの毒性や、放射線増感効果についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
既に研究室にあった消耗品を使用して研究を行ったため、残額が発生した。 H24年度の残額とH25年度の直接経費を用いて、PARP阻害剤(オラパリブ)の臨床応用に向けた研究(最大の放射線増感効果の得られるギメラシルとオラパリブの投与条件の検討)を行う。 様々な種類の癌細胞や正常細胞を用いて、オラパリブとギメラシル併用での最大の放射線増感効果が得られる、オラパリブの濃度、投与のタイミング、投与期間を、検討する。
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