研究課題/領域番号 |
24591850
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
茂松 直之 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (30178868)
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研究分担者 |
深田 淳一 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (50338159)
西村 修一 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40571138)
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キーワード | 放射線治療 / 胃癌 |
研究概要 |
ヒト由来胃癌の複数のセルラインに対して放射線照射を行い、細胞生存率をコロニー形成法で測定した。線量依存性に細胞生存率の低下が観察され、6Gy照射における細胞生存率がMKN45, MKN74では約50%であった。 これに続いて、PI3K/Akt/mTOR経路の活性を測定するため各セルラインに放射線照射を行いWestern blot法で測定した。結果、放射線照射により、PTENとp-mTORの発現が観察された。このことから、照射によるPI3K/Akt/mTOR経路の活性化が確認された。PI3K/Akt/mTOR経路に関連する物質の発現量を複数測定したが、放射線感受性との関係は本年度の時点では明らかにできなかった。 上記実験と並行して、PI3K/Akt/mTOR経路の活性を阻害し、放射線増感作用が期待される薬剤としてPI3/Aktの機能阻害剤である低分子化合物LY294002を準備して、各セルラインの細胞生存率をコロニー形成法で測定した。阻害剤濃度を高めるに従い生存率は低下したが、胃癌細胞株MKN45、MKN74ともに30μmol/lで生存率が約80%であった。この濃度が今後予定している阻害剤と放射線の併用に適した濃度と考えている。現在LY294002以外のPI3K/Akt/mTOR経路阻害剤を投与して細胞生存率を測定するとともに、阻害剤投与によるPI3K/Akt/mTOR経路の阻害効果について確認するため、阻害剤投与によるPI3K/Akt/mTOR経路関連物質の発現量測定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
胃癌細胞株にPI3K/Akt/mTOR経路の阻害剤を投与する実験は予定通り進行し、放射線照射との併用に適した薬剤濃度を推定できた。本年度予定していたPI3K/Akt/mTOR経路阻害剤と放射線照射を併用する実験には到達できなかったため、次年度予定している。一方、照射によるPI3K/Akt/mTOR経路に関連する物質の発現量測定による放射線感受性との関係については、薬剤を追加して複数回検討したが、関係は明らかにできなかった。これは重要な検討と考えており、次年度も他の測定法での検討や、測定する関連物質を変えるなどして引き続き検討し、放射線感受性との関連性を明らかにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、複数種類のPI3K/Akt/mTOR経路阻害剤を投与して細胞生存率を測定する。PI3K/Akt/mTOR阻害剤投与によるPI3K/Akt/mTOR経路関連物質の発現量測定を同時に行い、阻害剤投与によるPI3K/Akt/mTOR経路の阻害効果について確認する。今年度明らかにできなかった照射によるPI3K/Akt/mTOR経路に関連する物質の発現量測定による放射線感受性との関係については、アポトーシス関連物質であるXIAP、Bax、Bad等についても追加して測定する予定である。 放射線照射との併用が有効なPI3K/Akt/mTOR経路阻害剤と照射によるPI3K/Akt/mTOR経路の活性化に関連する物質を特定したのち、今年度推定したPI3K/Akt/mTOR阻害剤濃度における阻害剤と放射線照射併用による細胞生存率の測定およびPI3K/Akt/mTOR経路の活性化に関連する物質の発現量を測定する。 これらの胃癌細胞系での検討が終了次第、実験動物を用いた検討に進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、おおむね予定通りである。 繰り越し残額を含め、次年度の消耗品購入、共同施設使用料、人件費等に充当する予定である。
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