研究課題/領域番号 |
24591852
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
中山 秀次 東京医科大学, 医学部, 准教授 (20436273)
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研究分担者 |
徳植 公一 東京医科大学, 医学部, 教授 (00334061)
菱田 博俊 工学院大学, 工学部, 准教授 (60373966)
赤田 壮市 東京医科大学, 医学部, 教授 (70246198)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | DSC MRI / 放射線治療 / バイオマーカー |
研究概要 |
21名の転移性脳腫瘍と2名のグロムス腫瘍の患者から、DSC (Dynamic susceptibility contrast) MRI画像を得た。21名の転移性脳腫瘍の年齢中央値は69歳で男女比は14 : 7であった。原発巣は非小細胞肺がん15名、乳がん2名、腎がん、膀胱がん、子宮体がん、卵巣がんがそれぞれ1名であった。転移性脳腫瘍の平均長径は17.1 mmであり、DSC MRIにより転移性脳腫瘍が描出可能であった症例は17名であった。DSC MRIによる腫瘍の描出は長径に依存しており、腫瘍長径が1 cm以上である腫瘍と、それ未満である場合は統計学的有意差を認めた(P < 0.01)。よって、DSC MRIによる転移性脳腫瘍の検出に関するcut-off を1 cm以上とした。腫瘍のある位置と対側の同部位にregion of interest (ROI)を設定し、その比(ratio)をとることにより微小脳血流循環を評価した。充実性の場合は ratioが1より大きく、嚢胞性の場合は1より小さかった regional cerebral volume (rCBV), regional cerebral flow (rCBF) は充実性か嚢胞性かによりは統計学的に有意差を認めた。定位放射線治療を施行後に、充実性、嚢胞性の腫瘍のいずれも、ratioが経過と伴に1に近づく傾向がある。また、DSC MRIによる血流量の変化は造影T1強調画像よる腫瘍の縮小に先んじて、生じる可能性があった。 頭蓋内腫瘍以外に対するDSC MRIの応用は、頸静脈周囲の2名のグロムス腫瘍に対してDSC MRIの撮影が可能であり、照射後の血流量の変化も捉えることが可能であった。呼吸性変動のない、上咽頭、中咽頭腫瘍に対してもDSC MRIによる血流量の変化を捉えることが出来る可能性を示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23名の頭蓋内腫瘍の患者からDSC MRIを撮影するインフォームドコンセントを得ることが出来た。頭蓋内腫瘍の撮影シークエンスはBarajasらの報告を参考に施行したところ、良好にDSC画像の描出が可能であった。転移性脳腫瘍において、腫瘍の長径が1 cm以上と未満では統計学的な有意差を持って描出能に差を認めたため、cut offを1 cm以上とした。局所脳微小循環の指標である、regional cerebral blood volume (rCBV), regional cerebral blood flow (rCBF), regional mean transit time (rMTT), regional time to peak (rTTP)を得られ、DSC マップの作製が可能であった。充実性腫瘍であればrCBV, rCBF が増加していること。嚢胞性腫瘍であればrCBV, rCBFが低下していた。rCBV, rCBFは腫瘍が充実性か嚢胞性かにより、統計学的に有意差を認めることが確認できた。定位放射線治療後の変化を検討した結果、充実性、嚢胞性のいずれの腫瘍において、照射後に治療効果の発現とともに血流が正常値に戻ることが観察された。経時観察により充実性の腫瘍の場合はrCBV, rCBFが正常値に回復するが、その回復がMRI T1強調画像より早期に変化する傾向を認めた。頭蓋内腫瘍に関しては、予定通りにDSC MRIにより血流の変化を捉えられる事が可能で照射後の変化も観察された。 定位放射線治療を施行した頸静脈孔周囲のグロムス腫瘍2名の画像を取得でき、頭蓋外に浸潤し骨や動脈に近接しても、DSC MRIによっても描出可能であることが判明した。そのうち1名においては照射後に腫瘍の形状に変化を認めないのにも関わらず、DSC-MRIにより血流が低下していることが判明した
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今後の研究の推進方策 |
DSC MRIによる原発巣の違いによる描出の差は指摘できなかった。造影T1では捉えにくい腫瘍が、DSC MRIでは明らかに描出される腫瘍も認めており、そのような腫瘍がどのような特徴があるのか、症例を蓄積することにより明らかにしたい。 定位放射線治療後の、効果判定の指標として、regional cerebral blood volume (rCBV), regional cerebral blood flow (rCBF), regional mean transit time (rMTT), regional time to peak (rTTP)の何れが相応しいか、症例の蓄積と経過観察により明らかにしたい。rCBVとrCBFは腫瘍が充実性であれば1より大きく、嚢胞性であれば1より小さく、定位放射線治療の効果と伴に正常値に近づく傾向を認めた。その変化は造影T1強調画像よりも早期に認め、どの程度の期間で正常の血流量に戻るのかを確認する。6ヶ月以上の経過観察が可能であった腫瘍の中には、rMTTが延長している腫瘍が観察され、脳壊死との関係を探りたい。 DSC MRIはアルツハイマー病の診断に応用可能との報告を認めている。その方法を用いて、数例の検討ではあるが、後部帯状回領域の血流測定が可能であった。全脳照射後の認知能の低下が指摘されているが、全脳照射後の同領域の血流の変化を捉え認知能との関係を明らかにしたい。 頸静脈孔周囲の骨に囲まれたグロムス腫瘍の描出もDSC MRIにより可能であったため、呼吸性変動の少ない、上中咽頭がんにおいては可能であると思われる。DSC MRIはエコープランナー法で撮影されるため、呼吸性変動が伴う腫瘍の描出は難しく、評価に値する画像が取得できていない。共同研究者の工学博士と描出に関して検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
転移性脳腫瘍においてはDSC-MRは、腫瘍の大きさにより描出が依存しており、形状によりmean transit time, time to peak, cerebral blood flow, cerebral blood volumeが異なっている。定位放射線治療を施行すると、微小循環が回復し、その回復はMRI T1強調画像より早期に生じることが示された。よってこの結果を、米国放射線腫瘍学会と欧州放射線腫瘍学会における学会報告を行うため、ポスターの作成および出張費用として用いたい。学会発表後には英文誌への投稿を行うため、校正費、投稿料に、また、ホームページ作成の費用として使用する。 MRI画像はCT画像と異なり、絶対値では相対値であることから、患側と健側の比により転移性脳腫瘍の微小循環の変化を求めた。絶対値を求めるため、またより明快な各種DSC-MAPを求めるため市販のソフトが有効であるかを検証する。不可能な場合はMac baseの画像処理ソフトである、Osirixを使用し画像を解析する。またOsirix baseのIB neuroソフトを購入し、より明快なDSC-MAPの作成および微小循環の絶対値を求めるか否かを検討する。その場合は、処理能力のあるデスクトップ型のMac computerと充分な解像度を有するモニターを購入する予定である。 DSC MRIはecho planar法により撮影されているため、空間分解能に劣っている。腫瘍の描出部位を正確に把握するため、造影T1強調画像とのfusionを行いたい。これにより正確なregion of interestが設定可能となると考えられ、それに必要なソフトを購入する。
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