研究課題/領域番号 |
24591852
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
中山 秀次 東京医科大学, 医学部, 准教授 (20436273)
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研究分担者 |
徳植 公一 東京医科大学, 医学部, 教授 (00334061)
菱田 博俊 工学院大学, 工学部, 准教授 (60373966)
赤田 壮市 東京医科大学, 医学部, 教授 (70246198)
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キーワード | 放射線治療 / MRI / イメージングバイオマーカー |
研究概要 |
癌に対する放射線治療の効果は、癌細胞を増殖させない細胞にすることである。放射線治療直後には腫瘍容量は変化せず、数ヶ月以上を経て腫瘍が縮小する。よって、早期に放射線治療の効果があったのかは不明である。そこで、定位放射線治療を施行した転移性脳腫瘍に対して、dynamic susceptibility MRI (DSC MRI)により早期に治療効果判定が可能か転移性脳腫瘍を対象に検証した。DSC MRIを用いてrelative cerebral blood volume (rCBV), relative cerebral blood flow (rCBF)、relative time to peak (rTTP)、relative mean transit time (rMTT)を求めた。 24名の転移性脳腫瘍患者が対象となり、定位放射線治療の線量中央値は18 Gy を施行した。腫瘍の平均長径は18 mm(6 -28 mm)であった。3個の直径1cm以下の腫瘍はDSC MRIでは描出されなかったため、21個の転移性脳腫瘍を対象とした。2個の腫瘍は嚢胞型で、19個は充実型であった。嚢胞型と充実型のrCBVとrCBFには統計学的有意差 (p = 0.03) を 認めた。充実性腫瘍において、定位放射線治療前と1ヶ月後における造影MRIでは腫瘍を認めているにも関わらず、rCBVとrCBFが統計学的有意に低下していた。rTTPとrMTTには有意差を認めなかった。それ以降もrCBVとrCBFが同様に低下する傾向であるが、造影MRIにおいて腫瘍が縮小するのに伴いrCBVとrCBFが正常化する。 DSC MRIにより定位放射線治療後の転移性脳腫瘍の微小循環の変化を捉えることが可能であった。DSC MRIはイメージングバイオマーカーとして有用である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
呼吸性移動を伴う臓器からのDSC MRI取得はエコープランナー法で画像を構成していることより、描出が困難であった。呼吸性移動を伴う場合は現状の汎用技術では難しい。 定位放射線治療後の転移性脳腫瘍に対してはDSC MRIのパラメーターであるrelative cerebral blood volume (rCBV), relative cerebral blood flow (rCBF)を用いることにより、微小血流循環の低下を捉えることが出来た。その低下は造影MRIにより腫瘍が縮小する前に確認することが可能であった。DSC MRIで捉えられる腫瘍の微少血流の低下は1ヶ月後にはrCBV, rCBFの低下として捉えられた。腫瘍の縮小する経時変化とともに、rCBV, rCBFは増加することが確認された。これは、腫瘍が縮小することにより、その領域の正常脳血流が回復するためと思われる。 rCBV, rCBF等のパラメーターから得られたDICOMデータを視覚的に捉えやすく、客観的に評価できるための画像処理にすることに、工学博士とも相談しながら取り組んでいるが、市販されているソフトでは現在までに実現できていない。最終年度である今年度には、DICOMに特化したソフトを用いてより視覚的に捉えられやすいように試みていく。また、MRI画像は相対値で表されているが、絶対値で求める作業も施行する。 また少数ではあるが、頭頸部領域の腫瘍においてもDSC MRI画像が取得されているので、評価を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
定位放射線治療後の転移性脳腫瘍の血流の低下を、DSC MRIにより捉えることが可能であった。このDICOMデータを元に視覚的に捉えやすい画像に加工が可能か検討している。rCBV, rCBF, rMMT, rTTPはいずれもregion of interest (ROI)を設定することにより求める。ROIの設定の誤差によって値が僅かに異なってくるため、自動的に表示が可能かソフトウエアを用いて検討中である。 頸部領域のグロムス腫瘍に対して、放射線治療を施行したDSC MRIを撮影することが可能であった。しかし、現時点ではMRIによる変化を捉えられていないため、転移性脳腫瘍に比較して長期な経過観察が必要と考えている。また、腫瘍の近傍に動静脈があるためDSC MRI画像を取得できない可能性があるため、ROIが設定の方法を検討中である。DICOMデータ処理することに特化したソフト購入し、客観的に再現性があるrCBV, rCBF, rMMT, rTTPを得ることができないか検討する。またrCBV, rCBF, rMMT, rTTPは相対値であるが、絶対値で求め画像化することを検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
国際学会への出席を予定していたが、業務のため日程の都合がつかなかったこと、画像処理をするため現状の機器で可能であることも考慮していたため、機器の購入が遅れたことおよび機器を注文してから納品されるのに数か月を要し次年度となってしまったため。 国際学会への参加とコンピューターへのソフトの導入を予定している。
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