研究実績の概要 |
放射線治療後の効果判定は、画像診断により経時的に腫瘍の容積を観察することによりおこなわれている。機能性MRIの一つであるdynamic susceptibility contrast MRI (DSC MRI)は微小血流循環を描出することが可能であり、照射後の微小循環の変化を捉えられれば、イメージングバイオマーカーとして有効である可能性がある。前向き試験として、転移性脳腫瘍に対して定位放射線治療を施行する患者を対象とし、治療前に1.5テスラのMRIを用いて、治療前、治療後1ヶ月後に、造影T1強調画像、DSC Map、relative cerebral blood flow (rCBV)、relative cerebral blood flow (rCBF)を測定する。 24名を対象とした。嚢胞型が4名、充実型が20名であった。嚢胞型とは充実成分の長径が10 mm以上存在しない腫瘍を嚢胞型と定義した。嚢胞型の場合、腫瘍径が16 mm以下の2名、充実型の腫瘍径が10 mm以下の3名は、DSC mapにより腫瘍の描出が不可能であった。よって、嚢胞型の2名、充実型の17名はDSC mapにより検出が可能であった。充実型腫瘍の場合のDSC MRIによるcut off値は腫瘍長径が10 mm以上とした。定位放射線後1ヶ月に充実型の腫瘍17名の中で、3名は原病の悪化のため撮影が出来なかったため、14名の転移性脳腫瘍のDSC MRIを撮影した。DSC mapにより視覚的に腫瘍が確認できた12名の腫瘍のrCBV, rCBFを測定した。照射前のrCBVは 6.0±4.9, rCBFは2.1±1.0であり、照射後のrCBVは1.6±0.7, rCBFは1.1±0.1であった。rCBV (p = 0.004)は照射前に比較して、有意差をもって低下した。rCBF (p = 0.002)も同様に有意差をもって低下していた。定位放射線治療照射後1ヶ月後には造影T1MRI画像では腫瘍を認めているが、rCBV、rCBFが治療前と比較して有意差を認めて低下している。DSC MRIはイメージングバイオマーカーとして有効である。
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