研究概要 |
本年度はホウ素化合物結合ヒアルロン酸ナノパーティクル(B-HA-NP)の調製を重点的に行った。sodium borocaptate (BSH)のチオール基とヒアルロン酸のヒドロキシル基に対するヘテロ架橋剤を介してBSHを結合させ、その反応条件を詳細に検討した。従来のB-HA-NPのホウ素含有量は1,600ppm程度であったのに対し、新規調製したB-HA-NPは用いるヒアルロン酸分子量に依存して、M.W.4 k、80 k、 960 kでそれぞれ8,050 、6,100、2,800 ppmであった。また、B-HA-NPのピレンを用いたCACは、同じ分子量で比較すると0.297 0.300 0.772 mg/mLであり、自己集合性の集合体の形成が確認できた。このB-HA-NPの平均粒子径は同様に用いるヒアルロン酸の分子量によって異なり、44.2、78.5、134.6 nmであった。B-HA-NPの安定性を検討すると、pH7.4、4℃の保存状況では13 dで95%以上のホウ素が保持されており、37℃血清中においても、36 hで95%以上の保持効率を示し、安定性が確認された。また、ヒト皮膚繊維芽細胞への毒性試験の結果から、ホウ素濃度として50 ppm以下の実験条件では正常細胞への毒性は確認できなかった。B-HA-NPにローダミンを結合させることで、メラノーマ細胞内への取り込みが確認でき、京大原子炉においてコロニー形成アッセイによるBNCT効果の検討を行った結果、分子量80 k、 960 kのB-HA-NPではBSH溶液群よりも有意に高い抗腫瘍効果を得ることができた。また、B-HA-NPにエレクトロポレーションを併用すると、細胞内のホウ素濃度は1.9-4.2倍に上昇した。このことから、エレクトロポレーションによる細胞膜穿孔形成が、有望なホウ素送達手段であることが示された。
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