研究概要 |
本年度は、当初予定していた京大原子炉の後期運転が年度内に再開できなかった関係で、5回の中性子照射実験を全く施行できなかった。このため、前年度に作成したホウ素化合物結合ヒアルロン酸ナノパーティクル(B-HA-NP)を用いたin vitroにおける中性子照射実験等のスケジュールが現在も大幅に遅延している。そこで、本年度はホウ素担体の追加オプションとして、ホウ素の有力なキャリアーであるカチオニックリポソームをBSH担体に用い、負の電荷を有するヒアルロン酸をその正電荷のマスキングに利用し、且つCD44を介した取り込みを併用したヒアルロン酸結合カチオニックリポソームを新規調製した。 ヒアルロン酸結合カチオニックリポソームはカチオニック脂質にトランスフェンクションに頻用されるDOTAP〔N-[1-(2,3-Dioleoyloxy)propyl]-N, N, N-trimethylammonium methyl-sulfate〕)を用い、逆相蒸発法で水相にBSHを溶液を用い、十分な量のヒアルロン酸を静電的に結合させて調製した。この結果、リポソームの平均粒子径は159.2±35.2nmとなり、ゼータ電位は-0.95 mVで、BSHの封入率は平均11.5%であった。このリポソームを、10%血清またはヒアルロニダーゼを含有した緩衝液中で6時間までインキュベートしたところ、ゼータ電位は5.9 mVと正電荷を回復したことが確認できた。このリポソームを用いて細胞内への取り込み実験を行ったところ、血清等とのインキュベート前のリポソームではCD44を介した取り込みによりも、インキュベートにより正電荷を有したリポソームの方が細胞内のホウ素濃度が最大3.5倍上昇し、ヒアルロン酸の脱離・分解を介したカチオニックリポソームの高い取り込みが示された。
|