研究課題/領域番号 |
24591856
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
中山 文明 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 主任研究員 (50277323)
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キーワード | 再生医療 / 蛋白質 / 放射線 / 増殖因子 / 防護剤 / 細胞内移行 |
研究概要 |
Fibroblast Growth Factor (FGF)は細胞増殖因子の一種であるが、放射線障害の予防・治療に有効であると考えられている。一方、FGF12が放射線誘導性アポトーシスを抑制できることを培養細胞とマウスを用いて示してきた。そして、その機序の解明として、FGF12が細胞内移行できることも明らかにし、それに関わる細胞通過ドメインを同定した。初年度では、FGF12のマウス小腸に対する放射線防護効果を示し、その役割を担うドメイン候補を見出していた。そこで当該年度は、引き続きFGF12の放射線防護効果の機序を分子レベルで解明することを目的とした。FGF12Bの配列全長にわたって、13種類の30アミノ酸からなるペプチドを用いて、IEC6細胞に対する放射線照射後の抗アポトーシス能、照射マウス小腸における抗アポトーシス能、クリプト再生能などを評価した結果、FGF12Bのアミノ酸配列部位80~109番及び140~169番にそれぞれ放射線防護効果を有するペプチド配列が存在した。そこで、これらの部位をそれぞれ欠損させたFGF12変異体を作成し放射線防護効果を調べたところ、1か所の欠損では防護効果に変化を認めなかったが、両方の欠損で放射線防護効果に有意な減少を認めた。また、この2か所はそれぞれFGF12の細胞内移行を担うドメイン(CPP-M, CPP-C)を含んでいた。そこで、FGF12の細胞内移行と放射線防護効果の関係を調べるため、FGF1の細胞内移行を変化させた融合蛋白質を作成した。FGF1はCPP-M類似の配列を有するが、CPP-Cを欠損しており、細胞内移行はFGF12よりも弱い。FGF1融合蛋白の細胞内移行と放射線防護効果は相関した。以上、FGF12の放射線防護効果がその細胞内移行によることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は予定通り実験が進み、期待されるデータの取得に成功し、FGF12の放射線障害作用に関する機序の概略を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
FGF12の細胞内移行に関する細胞内分子の探索を行う。重要な役割を果たす関連分子の同定を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末は他業務に忙しく、予定していた3月の国際カンファレンスの参加を見送らざるをえなかった。同様に、いくつかの実験も年度を越すこととなった。 物品費 1,569,831円(実験動物、試薬、プラスチック消耗品、シーケンス、DNA合成)、旅費 150,000円(国内学会旅費、外勤)、その他 150,000円(学会参加費、英文校正費)
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