研究課題/領域番号 |
24591859
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
劉 翠華 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 研究員 (00512427)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 重粒子線 / 炭素線 / X線 / 高LET / 悪性中皮腫 / 細胞致死メカニズム / miRNA / miRNAプロファイリング |
研究概要 |
悪性中皮腫は非常に予後不良な難治性疾病と知られている。重粒子線である炭素線はさまざまなガン治療に対して優れた治療成績が上がっている。これまで6種類悪性中皮腫細胞について炭素線に対する細胞致死効果、コロニー形成法で調べた結果は高LET(80keV/μm)の炭素線の生物学的効果比(RBE)が高く、従来の放射線に比べて細胞致死効果が高いという結果が得られている。しかしその細胞致死メカニズムは不明である。MiRNAは細胞死、細胞増殖などさまざまな生物学的プロセスに関与することが報告されている。本課題では高LET炭素線照射された中皮腫細胞について細胞致死メカニズムをmiRNA発現レベルで検討する。 本年度、照射された悪性中皮腫細胞に対する網羅的miRNAのプロファイリング解析を行った。ヒト由来悪性中皮腫細胞を用いてX線や高LET炭素線で細胞を照射した。照射した細胞は2時間後と12時間後に収集し、miRNAを含むトータルRNAを抽出した。抽出したRNAをラベリングやハイブリダイゼイションしてから、スキャンし、miRNAアレイを解析した。結果、5.42Gyで照射後2時間ではFold Changeが1.5倍以上であり、miRNA数は35個であった。照射後12時間では6個あったのでX線より高LET炭素線照射した方がアップレギュレートすることが分かった。また照射後12時間の細胞については10個miRNAが0.5倍以下にダウンレギュレートしたことが分かった。X線と80keV/μm炭素線で同じ10%の生存率線量で中皮腫細胞を照射した場合は、照射後2時間で4個miRNAの発現は高LET照射した方がアップレギュレートし、17個miRNAはダウンレギュレートされたことが分かった。以上の結果、重粒子線照射された中皮腫細胞について、miRNAの発現はX線と異なることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重粒子線は放射線医学総合研究所の重粒子線がん治療装置(HIMAC)を使用でき、重粒子線の対照実験は同研究所のX線照射装置を利用する事が出来る。HIMAC利用に関しては、既にHIMAC共同研究課題が採択されており、マシンタイム配分を受ける事が出来た。研究費の使用が許可されてからすぐに実験に着手した。また同じ実験室でRNase(RNAを分解する酵素)を使う実験を常に行ったので、研究を順調に進めるのに、一部の実験を外注した。ほぼ計画通りに研究結果を得られた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に得られた結果を基にして、また2種類中皮腫細胞を加えてmiRNAプロファイリング解析を検討し、細胞増殖、致死にかかわる特異的miRNAの機能を解析する。また特定されたmiRNAを細胞に導入し、細胞致死、増殖およびたんぱく質発現を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年研究費主な消耗品を使う予定です。具体的に、細胞培養関連:器具、培地、血清の購入について450,000円、 RNA抽出、解析、機能分析およびmiRNA細胞の導入など:1,000,000円、学会発表のため旅費:100,000円、その他:30,000円などを見込む。
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