研究課題
本研究は、がん幹細胞の放射線応答を指標とした至適でかつ効率的な放射線治療効果増強法の確立を目指した基礎的研究である。がん幹細胞が治療の反応性や治癒可能性に密接に関与しており、がん幹細胞が放射線抵抗性であることを示唆する報告が相次いである。その機序として、DNA損傷に対する高い修復能力、増殖能力や再酸素化などのがん幹細胞の放射線応答の特徴に起因するものであることが指摘されている。しかし、多くの基礎データは1回照射によるものが多く、臨床で汎用されている分割照射に対するがん幹細胞の応答や照射間隔の違いによる反応性の相違などについては解明されていない。25年度および26年度は培養細胞を用いた研究に加えて、中咽頭癌根治的放射線治療例におけるHPV感染ならびにがん幹細胞マーカーCD44蛋白発現と予後の相関を分析し、CD44蛋白の新たなバイオマーカーとしての可能性について検討した。免疫組織染色の結果、p16およびCD44蛋白陽性はそれぞれ17例(44%)、29例(74%)に認められ、予後との相関では、p16陽性例の原発巣制御率は有意に良好で、CD44蛋白陰性例も原発巣制御率が良好な傾向が認められた。逆にCD44陽性でp16陰性の症例の生存率および局所領域制御率は有意に不良で、放射線治療に対する反応性不良や高悪性度群の抽出および予測に有用である可能性が示唆された。これらの基礎的および臨床的な結果から、がん幹細胞マーカーCD44蛋白発現は放射線治療を含めた治療反応性に密接に関わり、臨床的には放射線治療による原発巣制御率に相関する傾向があり、HPV感染のサロゲートマーカーであるp16蛋白と組み合わせることで、新たなバイオマーカーとなりうる可能性があることが示唆され、この結果も含めて現在論文投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
本研究によるがん幹細胞マーカーの発現例では、基礎的な研究と同様に放射線治療に対する抵抗性であることが、臨床での治療例でも確認された。その点では本研究の目的である、”がん幹細胞の放射線応答を指標とした至適でかつ効率的な放射線治療効果増強法の確立”、への重要な手がかりとなる成果が得られたと考えている。今後は、本研究成果をさらに発展させて、その機序やメカニズムを明らかにして、治療標的としての可能性について検討を進めたいと考えている。
上記のように本研究によるがん幹細胞マーカーの発現例では、基礎的な研究と同様に放射線治療に対する抵抗性であることが、臨床での治療例でも確認された。その点では本研究の目的である、”がん幹細胞の放射線応答を指標とした至適でかつ効率的な放射線治療効果増強法の確立”、への重要な手がかりとなる成果が得られたと考えている。今後は、本研究成果をさらに発展させて、その機序やメカニズムを明らかにして、治療標的としての可能性について検討を進めたいと考えている。
臨床的解析については成果を学会などで発表しているが、追加の発現解析が未完了のため、次年度の予算を繰り越した。
上記の追加解析は27年度の内には終了予定で、すでの現在その解析を進めている。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)
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