研究課題/領域番号 |
24591862
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石井 誠一 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60221066)
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キーワード | 外科医減少 / 卒前教育 / 質的研究 |
研究概要 |
【研究実績の概要】本研究では医学生の外科医志望に関する因子を卒前教育との関わりから分析する。研究方法として教育学・社会学の研究法である質的研究法を用い、因子分析を行う。H25年度の研究計画のうち、データ収集の方法を【外科研修医を対象とするfocus group interview】に絞って実施し、インタビューの内容から主題(テーマ)分析を行った。 【focus group interviewの構造確定】外科医師の減少に関する国内外の文献を検討し、インタビューの構造の大枠を定めた。H25年5月に研修代表者の所属する機関の外科研修医3名の協力を得てインタビューを試行し、インタビューの構造を確定した。 【focus group interview実施】外科医師教育病院の診療科長に研究協力を依頼し、承諾を得た7施設(大学病院6,市中病院1、予備調査を含む)で、H25年5月よりH26年1月までにのべ8回のインタビューを実施した。本研究参加に同意してインタビューに応じた外科研修医はのべ23人で、初期研修修了後の外科研修年数は1~7年、インタビュー時間は14~57分であった。 【主題分析】録音したインタビューの音声を逐語文書化し、文書情報について主題分析を進めた。抽出された主題のうち外科医を目指した動機は(1)臨床実習中の外科の現場体験、(2)患者さんの回復への直接貢献、(3)技術の習得と治療への応用、などであった。外科志望者が少ない要因としては他の診療科との比較において(1)過重労働、(2)自由時間が少ない、(3)前記1,2に対して報酬が少ない、などが指摘された。外科志望者を増やす方略として、卒前の外科臨床実習で患者さんの回復過程を当事者として体験させること、が挙げられた。一方、臨床実習前の小外科手技トレーニングや外科医の報酬増は外科医志望に寄与しないという声が多かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H25年度の研究計画のうち、データ収集の方法をfocus group interviewに絞って実施した。当初、外科研修医の多忙によりインタビューの日程調整が困難であった。そこで、早朝、夜間、休日等に訪問することでインタビューを実施して、データを収集し得た。研究計画に沿って概要の分析を進めた結果、医学部卒前教育と外科医志望との関連に関する主題の抽出に到った。インタビュー音声を起こした文書データは膨大であり、主題の確定にはなお分析を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度はfocus group interviewを継続し、主題分析を完了して研究の総括を行う。 【外科研修医を対象とするfocus group interview】H25年に実施したfocus group interviewのデータの主題分析を進める。インタビューを行った施設のうち、大学病院と市中病院の外科研修医では医師としてのキャリア設計が異なる傾向が見られたが、市中病院が1か所のみで比較には不十分であった。そこで、市中病院を中心に外科研修医のインタビューをさらに3~4回積み重ねて、比較検討を行う。インタビュー参加者に分析結果の確認と修正を依頼し、triangulationとする。 【医学科6年生対象のfocus group interview】外科系志望と学部教育との関連についての医学科6年生を対象とするインタビューを行う。インタビューは研究開始時の予定より規模を縮小して3~4大学で実施し、既に研究目的に沿った成果が上がっている外科研修医対象のインタビューの分析結果を補完することとする。 【研究成果の発表】研究成果を取りまとめ、外科関連および医学教育関連の学会等で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度の研究計画では、データ収集の方法としてfocus group interviewと用紙法による全国規模の意識調査を予定していた。このうちに意識調査については既出報告・論文が散見されたがインタビューを用いた報告・研究はなく独自性が高いと判断して、focus group interviewに絞ってデータ収集を行った。インタビューは当初の予定以上の回数を実施したが、遠方が少なかったため旅費は予定額を上回らなかった。結果としておおむね意識調査で予定した通信費相当分が次年度予算となった。 H26年度はfocus group interviewのデータを積み重ねるため、当初予定よりインタビュー回数を3~4回上乗せする。繰越額はこの旅費として使用する。
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