【研究目的】医学生の外科志望に関する因子を卒前教育との関わりから分析する 【研究対象と方法】H26年度は4回のインタビューを行い、外科研修医計16名が参加した。研究期間全体では、インタビュー12回(8大学病院、4市中病院)、参加した外科研修医39名(男性32、女性7)で、外科研修年数は1~7年、インタビュー時間は14分~62分であった。参加者には事前に研究の説明を行い、文書による同意を得た。インタビュー音声は逐語文書化し、個人情報は削除して匿名化した。 【結果】インタビュー内容を8項目に分類して分析した。(1)外科を志した時期と理由:時期は「臨床実習での外科経験後」が多く、ついで「卒後初期研修中」であった。理由は「外科的思考や方法論が合っている」が大半であった。(2)外科手技実習の影響:縫合等の実習は、「自身の外科志望に寄与しなかった」が多かった。(3)外科の魅力:「患者さんの回復への直接貢献」が多く、「技術の習得と自らの手による治療への応用」がついだ。(4)ロールモデルの存在:個別の外科医より、「外科チーム全体の姿勢・雰囲気に惹かれた」という声が多かった。(5)キャリア・プラン:大学病院の研修医は「漠然と将来を描いている」傾向が見られた。一般病院の研修医は「手術経験を数値目標として持っている」傾向が見られた。(6)外科が敬遠される理由:「時間の制約」、「過重労働」などワーク・ライフ・バランスの厳しさが挙げられた。「外科診療に接する機会が乏しい」こともマイナス要因とされた。(7)外科医を増やす方策・提案:卒前では「患者さんの回復過程を体験する」が、卒後研修では「外科研修の必修化」、「基本手術の執刀経験」が挙げられた。報酬増については外科希望者増の効果に懐疑的意見が多かった。(8)その他:女性研修医から昼夜外科臨床に従事する生活を将来も続けられるか不安である、という声があった。
|