研究実績の概要 |
【内容】「PRPが消化管吻合部の創傷治癒を促進するメカニズムの解明」を中心に研究を進めた. 【方法】異なる濃度中のPlatelet-Rich Plasma (PRP) に含まれる成長因子を検討するため, PRP(5×109個/ml)を各濃度に調整し, それぞれに含まれるTGF-β1およびPDGF-BBをELISAにより測定した. ヒト大腸線維芽細胞株CCD18CoとPRPを0~2%の各濃度に調整した上で共培養し, PRPと共培養を行った際の細胞増殖・Collagen産生を検討した. 共培養24時間後のDNA合成能はBrdUを用い, 共培養72時間後の細胞増殖は CCK-8を用いて検討した. 細胞増殖を検討した培養上清中のCollagen type I濃度をELISAにより検討した. また, Collagen type I mRNAの発現を検討した. 【結果と考察】PRPに含まれるTGF-β1およびPDGF-BBは, PRPの濃度増加に伴い増加した. 大腸線維芽細胞と各濃度のPRPを共培養すると, DNA合成能および細胞増殖能はPRPの濃度依存性に増加した. 共培養72時間後の上清中のCollagen type Iの濃度は濃度依存性に増加したが, 細胞増殖から期待される濃度ではなかった. Collagen type I mRNAの発現はPRP共培養により抑制されており, 個々の線維芽細胞が産生する量はPRP共培養により減少している可能性が示唆された. PRPと共培養を行うことで上清中のcollagen量は濃度依存性に増加したが, 線維芽細胞数の増加による効果であり, 個々の細胞においてはcollagen産生を促進しないことが示唆された. 【結論】in vitroの検討では, PRPの創傷治癒促進効果の主たるメカニズムは線維芽細胞に対する増殖促進効果であり, 線維芽細胞数の増加に伴ってCollagen産生量が増大している可能性が明らかとなった.
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