細胞膜直下の細胞内カルシウム動態を測定する高感度Ca2+センサー・プローブ(YC-nano-pm/FRET)を作製した。このプローブをヒトがん肉腫細胞(HT-1080細胞)に発現させてガラス管で局所に物理的な刺激付加するとその刺激部位を起点とする局所的な細胞内Ca2+の上昇とその細胞内Ca2+の増加が起点となり物理的刺激部位の反対側に細胞内をCa2+の増加が伝播する。そして、このような細胞内カルシウム伝播がある間隔を保って生じること。さらに、その一連の反応が繰り返しながら減衰していくことがわかった。そこで、この物理的刺激が細胞に伝わって起きているか確認するために、細胞が物理刺激で反応すると報告されているザイキシンに蛍光標識したプローブを作製して検討を行い、細胞への物理的刺激による細胞内Ca2+変動と物理刺激との相関を検討をおこない、物理的刺激と細胞内Ca2+の増加が時間・空間的に相関性があることがわかった。また、このような物理的刺激による細胞内Ca2+の増加によりストレスファーバーの消失を認め、細胞接着構造のターンオーバーが生じていることもわかった。さらに、この局所的な物理刺激によるCa2+の増加は、アクチンの重合阻害剤、PI3-キナーゼ阻害剤で抑制されること。TRPV2のノック・ダウンにより抑制することが判明した。またTRPVファミリーの他のチャネルも検討するために、各々チャネルを可視化するプローブを作製して検討した。TRPV2以外にTRPV4も物理的刺激部位に集積することがわかった。機械受容チャネルとしてTRPV2チャネルが機能していること、さらにチャネル自体の開閉による機構ではなく、チャネル自体の細胞表面へのトランスロケーション機構自体が機械受容カルシウム流入機構に重要であることがわかった。
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