研究課題
転写因子Nuclear Factor-κB(NF-κB)の活性化抑制に基づいた(A)抗癌作用、(B)拡大手術における手術侵襲の軽減、を主題に研究を行った。(A)ヒト膵癌細胞株に対してIMD-0354とGemcitabineを用い、腫瘍増殖抑制効果について検討した。(1)IMD-0354、Gemcitabineの単剤、両剤併用にて、濃度、時間依存性に細胞増殖抑制効果を認め、併用においてより細胞増殖抑制効果を認めた。(2)IMD-0354ではNF-κB活性依存的転写活性が抑制されたのに対し、GemcitabineではNF-κB活性が増強された。(3)定量PCRでは、ICAM1、survivin、cyclinD1の各々について、IMD-0354では減少するのに対して、Gemcitabineでは増加することが確認された。(2)ヒト膵癌細胞株皮下腫瘍マウスモデルを作製、IMD-0354、Gemcitabineの単剤での腫瘍抑制効果を認め、さらに両剤併用により抑制効果が増強されることを確認した。(B) 血行再建を伴う拡大手術における手術侵襲を評価するため、下大静脈切除再建時の循環動態の変化をブタを用いたモデルを作成、検討した。(1)下大静脈、大動脈、肝動脈、上腸間膜動脈の血行遮断を行い、動脈内に留置した圧測定カテーテル、体外超音波、レーザードップラーを用い、循環動態の変化を測定した。(2)下大静脈遮断時の血圧低下に対して、大動脈遮断単独では循環動態が不安定であったが、上腸間膜動脈遮断を併施することにより循環動態の安定化が得られた。(3)拡大手術における手術手技の工夫による低侵襲化、周術期のNF-κB活性化抑制による手術侵襲の軽減については実験継続中である。