研究課題
B型肝炎ウィルス肝疾患に対する生体肝移植後の再発予防は、術後免疫グロブリン(HBIG)と核酸アナログ製剤の投与により一定のコンセンサスが得られ、HBIGの安全性と医療費の高さに問題が残りHBワクチンによるHBIG離脱が最終目的である。これまで当科で肝移植を受けた149例中、HBワクチン接種を開始した14例を対象に検討を行った。HBIGから離脱できた群と離脱できなかった群に分け、T細胞の反応性をワクチン導入例の末梢血よりPBMCを分離し、HBsに対するTh1反応について、細胞増殖、TNF-α、IFN-γ産生により検討した。他病死した13例中9例(69%)でHBIGから離脱できた。2群間比較では、年齢・性・原疾患・ワクチン接種回数・免疫抑制剤血中濃度に有意差は無く、ワクチン接種期間のみ有意に離脱群で長く全例50か月以上であった(p=0.009)。HBIG離脱例のHBs抗原に対するTh1反応はコントロールと比較し、stimulation indexが3.23±1.36と有意に増加し、TNF-α、IFN-γ産生も高値を示した。これらの結果からHBIG離脱例では、免疫抑制下でもHBワクチンに対するT細胞の反応が明らかとなり、HBIGからの離脱のためには50か月以上の粘り強い長期継続ワクチン接種が重要であることが示唆された。この結果を2015年シンガポールで開催されたアジア移植学会(国際学会)で発表し、Transplatation proceedingsに投稿した(Usui M,et al.Transplant Proc. 2016:48(4):1179-83)。C型肝炎に関しては、C型関連肝疾患移植患者におけるPEG-IFN/RBV治療選択のテーラーメード化の検討として、C型肝硬変肝癌患者のgenotype、ウィルス量、HCVの遺伝子変異、および宿主側の遺伝子多型についてレトロスペクティブに検討してSVRとの関係を明らかし、発表してきた。しかし、近年のDSAの登場によりテーラーメード化の必要性が下がっているのが現状である。
すべて 2016
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Transplant Proc
巻: 48 ページ: 1179-1183
10.1016/j.transproceed.2015.12.110.