研究概要 |
我々は、ヒト肝臓内に局在する未成熟Natural killer(NK)細胞に、強い抗癌分子(TNF-related apoptosis-inducing ligand:TRAIL)を誘導する方法を確立し、肝臓移植後のドナー肝由来NK細胞補助療法の臨床実施により癌無再発生存率の有意な改善を得た。しかし、末梢血由来の成熟NK細胞からTRAIL分子を誘導することは現段階では不可能である。そこで、本研究では、ヒトCD34+造血幹細胞あよびiPS細胞から未成熟NK細胞を効率的に分化誘導する技術を開発し、抗腫瘍活性をin vitroおよびin vivoモデルで評価することを目的とする。 本年度は、ヒトCD34+造血幹細胞およびiPS細胞からの未成熟NK細胞の誘導効率の工夫とフローサイトメトリーによる細胞表面抗原の解析を行った。その結果、未成熟NK細胞の分化にはH3000メディウムにFLt3, SCF, IL-3, IL-6,IL-15,IL-7を添加し1週間培養後X-VIVOメディウムにFLt3, SCF,IL-15,IL-7を加え、さらに21日間培養で効率的に誘導し得ることを確認した。さらに、培養最終段階の4週間後にIL-12とIL-18を同時に添加することで、NKG2DやKNp46やTRAILの表出が高まることを確認した。この誘導細胞を用いて、肝細胞癌株であるHUh7に対しての細胞傷害性を51Crリリース法で評価し、肝臓内NK細胞と同等の細胞傷害性があることを確認した。次に、Tic株を用いたヒトiPS細胞からの分化誘導では、CD34+CD45+細胞への分化を経てCD56+細胞への分化誘導を確認した。今後は誘導NK細胞の機能評価を実施する。
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