研究課題/領域番号 |
24591880
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田中 友加 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 助教 (90432666)
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研究分担者 |
大段 秀樹 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (10363061)
石山 宏平 広島大学, 大学病院, 病院助教 (50437589)
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キーワード | NK細胞 / 肝臓癌 / 細胞免疫療法 |
研究概要 |
我々は、ヒト肝臓内に局在する未成熟Natural Killer(NK)細胞に、強い抗癌分子(TNF-related apoptosis-inducing ligand: TRAIL)を誘導する方法を確立し、肝臓移植後のドナー肝由来活性化NK細胞補助療法の臨床実施により癌無再発生存率の有意な改善を得た。しかし、末梢血由来の成熟NK細胞からTRAIL分子を誘導することは現段階では不可能である。そこで、本研究では、ヒトCD34+造血幹細胞およびiPS細胞から未成熟NK細胞を効率的に分化誘導する技術を開発し、抗腫瘍活性をin vitroおよびin vivoモデルで評価することを目的とする。 昨年度は、ヒトCD34+造血幹細胞およびiPS細胞からの未成熟NK細胞の誘導効率の工夫とフローサイトメトリーによる細胞表面抗原の解析を行った。培養条件は、iPS細胞からは、H3000メディウムにFlt3、SCF、IL-3、IL-6、IL-15、IL-7を加えた培養液で、10日間培養後X-VIVOメディウムにFlt3、IL-7、IL-15添加培養液に交換し、IL-12、IL-18による短期刺激でTRAIl発現NK細胞を誘導することを確認した。 今年度は、抗腫瘍分子であるTRAILに加え、HLA-classIを認識するNKG2DやDNAM-1(CD226)およびFas ligandの表出の検討とともに肝癌細胞株(HepG2, Huh-7)の上記分子に対するLigandの検索を実施した。また、上記細胞に対する細胞傷害性試験を実施した。さらに、ヒトCD34+造血幹細胞の解剖学的存在によるNK細胞分化誘導の差を確認するため、末梢血、骨髄、肝臓内のCD34+細胞を用いて誘導実験を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Induced immmature NK細胞の誘導法の確立とTRAIL発現はすでに確認した。CD34+細胞からの誘導NK細胞の肝癌細胞株に対する細胞傷害性も確認し得た。臨床応用を目指すにあたり、今後は末梢血中に存在するCD34+細胞を回収し、詳細な培養系の確立を目指す。研究計画は順調に進んでいる。しかしながら、 iPS細胞細胞由来の誘導NK細胞の増殖効率が乏しく、機能解析を実施し得ていない。誘導後のNK細胞のmRNAのテロメア活性を検索すると、iPS由来のものはテロメア活性が低下していることが示唆された。テロメア活性を維持するための、培養系あるいは誘導高率の改善を図る必要がある。充分な誘導効率が得られれば、抗腫瘍活性の確認とin vitroによる抗腫瘍メカニズム解析およびin vivoモデルを用いた機能解析を必要とする。この部分において、計画がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
iPS細胞の増殖効率には、誘導NK細胞のテロメア活性の低下やBmi1の発現低下があることから、増殖初期にhTERTやBmi1の遺伝子導入による細胞増殖の効率改善を試みる。また、induced immature NK細胞の機能解析にあたり、担癌マウスを用いて細胞移入実験およびブロッキング抗体投与による抗腫瘍効果の確認を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていくうえで、必要に応じて研究費を遂行したため、当初の見込み額と執行額において異なった結果となった。また、iPSからの分化誘導において改善の必要があったため、次年度に改善点に対する実験を行うことになった。 今年度のiPS実験の改良を次年度に実施する。その他の研究計画に大きな変更はなく、予定通りの計画で進める。研究費は、実験動物購入費および解析に必要な試薬・抗体および培養液に使用する予定である。
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