研究課題
ドナー不足を解消する方策として心停止後ドナー(DCD)からの肝移植が重要視され、欧米ではその実施数が増加している。しかし、DCDからのグラフト肝は肝温虚血障害が加わることにより、脳死肝移植に比べて移植後早期のグラフト機能不全と胆管狭窄などの胆管合併症の危険性が高いことが指摘されている。近年では摘出後のグラフト肝を体外灌流することによりそのviabilityを向上させうることが明らかになりつつあるが、現状での問題点として1)体外灌流法における灌流液温度が冷却(4℃)と常温(37℃)のどちらがより保護効果があるのか、2)灌流後にグラフト肝の搬送、移動のために必要な単純冷却保存により再びviabilityが低下する、など解決すべき課題が多い。本研究は本邦でのDCD肝移植の臨床応用を目指すためのトランスレーショナル・リサーチとして、ブタ肝移植実験によってこれらの課題について検討することを目的として研究を開始した。これまでの成果としては、1)ラットを用いた心停止ドナーからの肝移植実験系を確立した。心停止後の温虚血障害がない条件では100%の一週間生存率が得られるが、30分の温虚血が加わった場合、その生存率は約50%にまで低下する。この30分温虚血モデルを用いて灌流液の至適温度などの検討を行っている。2)1)と平行してブタ肝移植実験を開始している。当大学内の動物実験センターで、ブタ実験動物の搬入、飼育、全身麻酔下の開腹手術などブタ肝移植実験の準備を完了した。実際に数頭のブタを用いた肝移植手術実験を行い、DCD肝移植モデルの確立に向けて検討している。
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