研究概要 |
HLA-Fは非古典的HLAクラスI遺伝子の一つであり、同じく非古典的HLAクラスI遺伝子であるHLA-E、HLA-Gと共に1990年頃、Geraghtyらが発見した遺伝子である。これらは古典的HLAクラスIのHLA-A、-B、-Cと異なり、非常に多型性が乏しく、また発現部位も限局されている。HLA-Fは、それまでWainwright ら(J Immunol., 2000)、Lepin ら(Eur J Immunol., 2000)から、細胞質には存在するが、細胞表面には発現しないと言われていたが、石谷 ・Geraghty DEらが、細胞表面に発現するHLA-Fを検出しうるモノクロナル抗体の作製に成功し、①HLA-Fは、定常状態のB細胞表面には発現していないが、EB virusにより形質転換したB細胞表面には発現すること(J Immunol., 2003)、②HLA-Fは定常状態のリンパ球表面には発現していないが、活性化されたリンパ球表面には発現すること(Eur J Immunol., 2010)、③HLA-FはCD25+CD4+制御性T細胞表面には、定常・活性化のいずれの状態においても発現しないことを示した(Eur J Immunol., 2010)。このHLA-Fの特徴を利用して抗HLA-F抗体を使用した活性化細胞除去による免疫抑制法の開発を目指し、初めに腎臓・肝臓・造血幹細胞移植前後における患者末梢血リンパ球におけるHLA-Fの発現を解析した。これまでに、腎臓移植31例、肝臓移植21例、造血幹細胞移植17例について、HLA-Fの発現変化について継時的な解析を行っている。現時点では、各臨床データと、HLA-Fの発現について、明確な相関は得られていない。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は、研究計画通りに研究費を使用したが、解析を行う中で、検討する項目が追加されたため、試薬購入による支出が当初の予定よりも大幅に増加した。25年度以降についても、同様に試薬購入費が大幅に増加すると想定される。しかし、25年度以降の研究費は、24年度の60%程度になっているため、試薬購入費不足により、25年度以降の研究の継続が困難になる可能性がでてきた。これを回避するため、24年度の人件費・学会出張費等への支出を抑え、25年度請求分と合わせて使用できるようにした。 使用計画については、申請書の計画通りに使用し、試薬(主に抗体)、ガラス・プラスチック等使い捨て器具(チューブ、シャーレ、、ピペット等)に使用する。内訳は、抗HLA-Fモノクロナル抗体¥60,000/本×6=360,000-、FACS用抗体(CD25、CD4、CD3、CD19、CD14、CD56、CD127、アイソタイプコントロール3種)¥50,000/本×10=500,000-、細胞分離キット(CD3、CD19、抗マウスIgGビーズ)¥80,000/kit×4=320,000-、タンパク質解析用試薬\65,000-(PAGEゲル\2,500/10枚×100枚=\25,000-、PVDFメンブレン\40,000-)、その他をガラス・プラスチック等使い捨て器具に充てる。
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