研究課題/領域番号 |
24591887
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
庄 雅之 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50364063)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | T細胞 / 癌免疫療法 |
研究概要 |
【術前治療によるメモリーT細胞誘導による腫瘍再発抑制効果】 術前の腫瘍抗原が豊富な段階で,抗PD-1もしくは抗CTLA-4抗体を投与することにより,より効率的に腫瘍特異的メモリーT細胞が誘導されるのではないかと仮定し,これを検証した.腫瘍接種後,各抗体を1回のみ接種し,腫瘍を外科的に切除.その後30日後に腫瘍を再接種して,生着率を検討した結果,有意に抗体治療を行った群では,腫瘍の再生着が抑制された. 【腫瘍特異的メモリーT細胞能動的誘導による持続的腫瘍増殖抑制効果】 腫瘍径が10mm以上に達した後に,PD-1およびCTLA-4抗体を投与し,腫瘍を完全退縮に至ったマウスに切除後100日以上経過した時点で,同系腫瘍および異系腫瘍を再接種して,生着率を検討した結果,同系腫瘍のみが生着しないかあるいは自然退縮する現象を確認した.このことから抗体治療により腫瘍抗原特異的なメモリー細胞の誘導ができ,かつ長期間抗腫瘍効果が持続することが明らかとなった. 【PD-1および血管新生阻害による相乗的抗腫瘍効果】 抗PD-1抗体と抗VEGFR2抗体の併用により,相乗的な抗腫瘍効果が得られることを明らかとした.腫瘍血管の正常化と免疫応答の増幅による機序が考えられた. 上記の研究成果は,化学療法が発達した今日もなお治療抵抗性あるいは難治性悪性腫瘍に対する新たな治療法となり得る可能性がある.また外科手術と組み合わせることで,腫瘍特異的メモリー細胞の能動的に誘導することができれば,患者負担の少ない新たな術後再発防止策を開発し得ることにもなる可能性がある.その点からは医療経済的にも患者負担の点からもその意義は大きく,研究遂行の重要性は高いと考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に研究計画として立案した消化器癌における新たな免疫制御因子であるHVEMあるいはCD155についての検討をすすめ,予想通り,消化器癌におけるそれらの臨床病理学的な重要性を示唆するデータが得られた.すなわち,予後との関連が有意なものとして認められ,さらに機序の解析の結果,腫瘍内浸潤T細胞との有意な関連を認めた.したがって,以上のことから臨床的意義を有することが明らかとできた.現在論文を作成,投稿中である.また局所の免疫活性をRealtime PCRで検討した結果,いくつかのサイトカインについての有意な上昇が認められた.研究改革の全てではないが,概ね順調に研究計画を実施できているものと思われる.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に記した通り,前年度に得られた結果に基づいて動物実験等を適宜進めて行く方針.特に研究計画の変更の必要性はない.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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