研究課題/領域番号 |
24591889
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
猪口 貞樹 東海大学, 医学部, 教授 (60160008)
|
研究分担者 |
斉藤 剛 東海大学, 医学部, 准教授 (30266465)
安藤 潔 東海大学, 医学部, 教授 (70176014)
|
キーワード | 培養皮膚 / 抗菌ペプチド / 遺伝子導入 / hBD3 / hCAP-18/LL37 |
研究概要 |
本研究は、hBD3およびhCAP-18/LL37遺伝子を導入した培養皮膚が、移植後生体内において当該抗菌ペプチドを発現・分泌し、またヒト皮膚組織の再生および局所免疫に対して悪影響を与えないことを明らかにしようとするものである。 平成24年度までに、①hBD3 cDNA、hCAP-18/LL37 cDNAまたは両者をタンデムに連結した遺伝子を組換えたウイルスをそれぞれ作製。②組換えウイルスの感染により各遺伝子をヒト培養表皮細胞、真皮線維芽細胞へ導入すると、導入遺伝子が発現して各蛋白が培養上清中に分泌され、③このうち分泌されたhCAP-18は好中球プロテアーゼにより抗菌活性を持つLL37が生成されること、を確認している。 平成25年度は、hCAP18/L37のcDNA組換えアデノウイルスを感染させたヒト培養表皮細胞をヒト真皮由来培養線維芽細胞とともにヌードマウス皮下に移植し、形成された類上皮嚢胞を非感染細胞(対照)移植後の嚢胞と病理組織学的に比較検討した。移植後12日の皮下結節は、感染細胞移植後が非感染対照移植後よりやや大きかった。形成された類上皮嚢胞周囲の新生血管(CD31陽性細胞)の切片上密度は、感染191.7±49.9/mm2、非感染対照105.9±26.3/mm2で感染細胞移植後が有意に高かった。また基底膜蛋白の局在、p63陽性細胞の密度、ki67陽性細胞の密度などに大きな差異は見られなかった。 以上から、hCAP18/L37のcDNAを導入した表皮細胞は、移植後の皮膚再生に悪影響を与えることなく、再生皮膚周囲の血管新生を促進するものと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度までに、hCAP18/L37のcDNA組換えアデノウイルスを感染させたヒト培養表皮細胞を用いた培養皮膚は、当該遺伝子を一定期間発現し、好中球プロテアーゼ存在下で抗菌活性を持つLL37が生成されることが判明している。十分なウイルスストックの作製に時間を要したため全体計画がやや遅れていたが、平成25年度の研究結果から、hCAP18/L37遺伝子導入ヒト培養表皮細胞を線維芽細胞とともに免疫不全マウスへ移植したところ、再生ヒト皮膚組織に悪影響は見られず、周囲の血管新生を促進することが明らかとなった。現在さらに動物実験を実施中であるが、本研究の結果から培養皮膚移植の問題点である感染への脆弱性が克服できる可能性が高く、当初の目的はおおむね達成されつつあると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度には、hBD3 cDNAおよびhCAP-18/LL37 cDNAをタンデムに連結した遺伝子を導入したヒト表皮細胞、線維芽細胞についても、同様の移植実験を実施し、当該遺伝子の発現およびヒト皮膚組織の再生への悪影響がないこと、血管新生への影響などを確認する。 また、マウス細胞に当該遺伝子を導入して同系マウスに移植し、過剰な炎症反応が惹起されないかどうかについても確認する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
十分量のウイルスストックを作製するために、平成24年度に全体計画がやや遅れ、移植用細胞の培養、動物実験およびその解析に要する費用が計画より少なかった。 その後の研究は順調に推移しており、平成26年度にこれらの研究費を使用する予定。 平成26年度に、移植用細胞の培養、動物実験およびその解析、ウイルスの追加作製などを行うため、試薬、培地、実験動物、その他の消耗品に研究費を使用する予定。
|