研究課題
大腸癌に発現する抗癌剤耐性ABCトランスポーターのスプライスバリアント解析を行った。大腸癌患者3例の手術検体(正常組織と癌組織)、また、5種類のヒト大腸癌由来細胞株からRNAを抽出し、次世代シーケンサーによる網羅的なトランスクリプトーム解析(RNA-Seq)を行った。結果、Ensemblに登録されている48種類のABCトランスポーター全505種類のスプライスバリアントについて、正常組織と癌組織・大腸癌細胞株の発現量を比較したところ、大腸癌特異的なスプライスバリアントの候補として41種類が挙げられた。RT-qPCRによってvalidation実験を行ったところ、2種類について再現性を示すことができた。将来的にこのバリアントの臨床病理像と相関解析し、さらには機能解析を行う。また、RNA-Seqによる解析の結果、多剤耐性ABCトランスポーターであるABCC3の発現量が正常組織に比べ癌組織で半分以下に低下していた。このことから、多段階的に大腸を癌化させるadenoma-carcinoma sequenceが、ABCC3の発現を制御していることが考えられた。そこでWntシグナルに着目、大腸癌細胞株でWntシグナル下流で様々な遺伝子の発現を制御しているβ-cateninとTCF7L2をノックダウンしたところ、ABCC3のmRNA発現量が概ね2倍以上に増加した。次に、Wntシグナル経路においてβ-cateninの分解を促進しているGSK-3βの阻害剤(AR-A014418, LiCl)を投与しWntシグナルを活性化させたところ、大腸癌細胞株においてABCC3の発現が濃度依存的に低下した。このことから、ABCC3は、Wntシグナル経路にあるβ-catenin/TCF7L2によって、その発現が抑制されていることが示唆された。
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Int J Clin Oncol.
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