研究課題
甲状腺癌の多くは悪性度が低く、遠隔転移の頻度もきわめて低く局所療法のみで良好な予後が期待できる乳頭癌が占めている。しかし、一方低分化癌は局所再発を繰り返し、遠隔転移を比較的来しやすい。また乳頭癌、濾胞癌を素地として発生した未分化癌はきわめて悪性であり、急速な転帰をたどることが多い。甲状腺低分化癌、未分化癌に対して有効な抗癌剤は臨床応用されておらず、治療の選択肢がきわめて限られるのが現状である。また、どのような症例において未分化転化が生じるのかは未解明である。種々の治療法が検討されてきているが、臨床応用に至った例は皆無である。平成25年度の研究実績としては、甲状腺乳頭癌における全摘術後のサイログロブリン(甲状腺特異的タンパク質)に対する抗体(抗サイログロブリン抗体)の変動と予後との関連を検討した臨床研究結果を英文論文として発表した。この研究により、抗サイログロブリン抗体が術後上昇する症例は術後早期に局所・遠隔再発を来たし、予後不良の傾向があることが示され、未分化転化を来したりする予後不良症例の選択可能性が示唆された。現在さらに過去の臨床検体を多数用いて抗サイログロブリン抗体が術後上昇を来している症例を後方視的にEMTと関連するとされるvimentinをはじめとするタンパク質の発現を免疫染色により後方視的に評価し、予後との関連を検討している。また、低分化癌と通常型乳頭癌症例における、腫瘍組織中のEMT関連蛋白の発現の差異を免疫染色により検討している。
3: やや遅れている
甲状腺培養細胞株におけるEMT関連の遺伝子群発現の検討は以前報告したが、それらの発現に対するheat shock protein (HSP)阻害剤である17-AAGやその誘導体の影響を検討することが未達成である。また動物実験においては甲状腺細胞株をヌードマウスにおいて腫瘍形成させ、実験動物モデルを構築することが未達成であり、その動物モデルを用いた17-AAGの移植腫瘍の浸潤能、遠隔転移能の検討が未達成である。理由としては臨床業務量の増大により、当該研究に割り当てられるエフォートが当初計画していたより低下したためと考えられる。
甲状腺培養細胞株におけるEMT関連の遺伝子発現の検討は以前報告したが、それらの発現に対するheat shock protein (HSP)阻害剤である17-AAGの影響を検討することを早急に実施する。また動物実験においては甲状腺細胞株をヌードマウスに移植する方法を確立する。その動物モデルを用いた17-AAGの移植腫瘍の浸潤能、遠隔転移能の検討を実施する。また臨床検体をもちいた、甲状腺癌組織中のEMT関連タンパク質の発現の検討も実施する。
計画進捗が遅れていて、EMT関連の遺伝子発現の検討に要する試薬などの消費が当初の計画より少なかったことにより試薬購入費が減少したため。また、実験動物の維持管理費が当初の計画より減少したため。EMT関連の遺伝子発現の検討に要する試薬の購入、実験動物の維持管理費に充当する。
すべて 2013
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Endocr J.
巻: 60 ページ: 871-876