研究課題
甲状腺癌の多くは悪性度が低く、遠隔転移の頻度もきわめて低く局所療法のみで良好な予後が期待できる乳頭癌が占めている。しかし、一方低分化癌は局所再発を繰り返し、遠隔転移を比較的来しやすい。また乳頭癌、濾胞癌を素地として発生した未分化癌はきわめて悪性であり、急速な転帰をたどることが多い。甲状腺低分化癌、未分化癌に対して有効な抗癌剤は臨床応用されておらず、治療の選択肢がきわめて限られるのが現状である。また、どのような症例において未分化転化が生じるのかは未解明である。種々の治療法が検討されてきているが、臨床応用に至った例は皆無である。平成26年度の研究実績としては、小児および若年性甲状腺乳頭癌の特徴について、当院での症例成績を用いて国内学会にて発表した。内容としては、小児および若年性甲状腺乳頭癌は広範なリンパ節を来たし、進行した状態で発見されること、生命予後においても、悪い傾向があることである。また、共同研究として、国内の甲状腺専門施設により未分化癌コンソーシアムが結成されており、未分化癌の症例を集積している。このコンソーシアムから本邦における未分化癌の発生状況、治療状況などが明らかになり、国内学会で報告した。未分化癌に転化する可能性が高い、高齢者の遠隔転移巣では分化能の指標となるヨウ素取り込み能が低下していることも国内学会で発表した。これらの臨床的な知見を参考として、若年と高齢者の乳頭癌切除標本を用いて、EMT関連タンパク、分化能の指標となるNaIシンポーター、その他悪性化との関連が示唆されている遺伝子、タンパクの発現を検討している。
すべて 2014
すべて 学会発表 (3件)