研究実績の概要 |
乳癌に対する抗癌治療、特に化学内分泌療法施行時の乳癌組織における細胞内エネルギー調節を調べることにより化学内分泌療法の作用メカニズムを明らかにするため、術前化学内分泌療法前後の組織を用いて細胞死の態様、細胞増殖能の変化、癌細胞・間質のエネルギー代謝の変化について検討した。術前化学内分泌療法としてエキセメスタン+シクロフォスファミドの併用療法を用いた臨床試験の39例において治療前後の乳癌組織を用い、オートファジーマーカーであるbeclin 1, LC III、アポトーシス関連マーカーであるTUNEL, M30の染色を行い、癌細胞、間質細胞において、治療前後の変化、治療効果との関連につき検討した。その結果、オートファジーマーカーはともに治療により増加を示し、アポトーシスマーカーのM30も同様に治療後に増加した。しかしTUNELは治療前後で変化がみられなかった。昨年検討したホルモン療法においてはオートファジーマーカーは同様に増加を示したが、M30は治療前後で減少しており、アポトーシス誘導機構においてホルモン療法と化学内分泌療法、とくにシクロフォスファミドの追加投与は異なる反応性を示すことが示唆された。また、ホルモン療法で認められた間質のオートファジー(beclin1発現)による治療抵抗性に関しては、化学内分泌療法では認められず、間質のオートファジーによるホルモン療法抵抗性はシクロフォスファミドの追加により克服できる可能性が示唆された。以上より、間質のエネルギー代謝による癌細胞の治療反応性に関しては、ホルモン療法と化学内分泌療法では異なることが示された。
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