研究課題
本研究ではトラスツズマブ耐性(ADCC耐性)乳癌細胞株を樹立することによってその耐性獲得のメカニズムを解明し、耐性に関わる新規診断法の開発を目的としている。トラスツズマブ耐性株のmRNAの発現をDNAマイクロアレイによって解析した結果、vATPase(vacuolar type ATPase)の構成分子の一つである、ATP6V1B1の有意な減弱がみられることを見出した。マイクロアレイの結果を検証するため、親株と耐性株の遺伝子発現を、リアルタイムPCR法を用い定量的に解析した。その結果、耐性株においてATP6V1B1遺伝子は有意に低下しており、マイクロアレイと同様の結果が得られた。次に、親株のATP6V1B1遺伝子をshRNAにてノックダウンした細胞株では、親株と比べ、有意に低いADCC活性を示した。以上より、ATP6V1B1遺伝子がADCC耐性に関わる分子の一つである可能性が示唆された。本年度は、vATPaseを構成する他のsubunitの遺伝子をノックダウンして実験を行った。その結果、ATP6V1B2などの他の遺伝子のノックダウンを行っても、ADCC活性の低下は見られなかった。また、ATP6V1B1遺伝子が耐性に関わる分子であることをさらに確証させるため、CRISPR/Cas9システムを用いて、親株のATP6V1B1遺伝子のノックアウト細胞株を作製した。ノックアウト細胞株では、ノックダウン細胞と同様に、細胞傷害アッセイで低いADCC活性が見られた。以上の結果から、ATP6V1B1遺伝子が特異的にADCC耐性機構に関わっていることが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
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