研究課題/領域番号 |
24591902
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
谷山 義明 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60372611)
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研究分担者 |
森下 竜一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40291439)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 乳癌 / 悪性黒色腫 / 癌転移 |
研究概要 |
悪性新生物に対する治療法は様々に開発されてきたが、依然として我が国死因の1位であり、新規治療法の開発が求められている。これまで癌治療薬は癌の増殖力を抑える治療法が様々に考えられ原発巣の増殖はある程度抑制できるようになってきたが、転移を十分に抑制することはできず結果的に予後を改善するに至っていない。一方、臨床症例において乳癌や悪性黒色腫の転移症例でぺリオスチン(PN)が上昇していることが報告され注目されている。 我々が独自に作成したPN1中和抗体を用いてマウスF10悪性黒色腫細胞の肺転移モデルで効果を検討したところ、4T1乳癌細胞と同様に、原発巣の抑制とともに、肺転移巣の著明な抑制効果を確認することができた。一方、すでに作成終了しているPNKOマウスを用いてF10悪性黒色腫での効果を検討した。結果は意外にも、PNKOマウスには F10悪性黒色腫での原発巣抑制効果や、肺転移抑制効果は確認できなかった。この原因として、癌細胞周辺の線維芽細胞から発現されるPNを抑制しても、F10自体がPNを過剰に発現するために癌抑制効果がでないことが考察された。そこで、癌細胞自体へのPNKOも行うため、シグマアルドリッチ・ジャパンの契約し日本では初のCompoZr Zinc Finger Nuclease Technologyを用いたPNKO細胞の作製を予定していたが最後になってシグマアルドリッチより、成功する保証はできないとの連絡があり実験遂行できなかった。 一方、H24年12月にNature誌に乳癌幹細胞のニッチ形成にPNが重要でありPNの抑制が乳癌幹細胞の肺転移抑制につながるとの論文が報告され、現在PN中和抗体による乳癌幹細胞の転移抑制効果を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々はすでに4T1マウス乳癌細胞の肺転移モデルでのPN中和抗体による癌発巣の抑制及び、肺転移抑制効果を確認していたが、今回F10マウス悪性黒色腫モデルにおいてもPN中和抗体による、原発巣の抑制や肺転移の著明な抑制を詳細に証明することができた。さらに、4T1モデルは背景がバルブCのマウスを使う必要があり、現在PNKOマウスのバッククロスを掛けている。一方、F10マウス悪性黒色腫モデルにおいては背景がC57BL6であったので現在のまま使えるために先にF10悪性黒色腫モデルでの作用を検討した。意外にも効果を証明できず、やはり癌周辺の線維芽細胞のPNを抑制する必要があると考えられた。さらに、シグマアルドリッチ・ジャパンによってPNKOの癌細胞を作る予定で契約を交わしていたが、最後になってシグマアルドリッチ・ジャパンが成功の保障はできないとの連絡をしてきたため頓挫した。
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今後の研究の推進方策 |
F10マウス悪性黒色腫モデルでの原発巣の抑制や、肺転移の著明な抑制作用の機序を検討する必要がある。具体的にはPN中和抗体による癌抑制効果を遺伝子アレイ、あるいは蛋白アレイを掛けていくことによってその機序を明らかにする。また、我々の中和抗体が入ることによってPN蛋白質がどのような蛋白質と結合を阻害されるかを詳細に検討する予定である。また、悪性黒色腫や乳癌症例に外科切除例の臨床サンプルを用いて 一方、マウス乳癌幹細胞の肺転移がPNKOマウスで著明に抑制されていることがH24年末のNature誌に掲載された。乳癌幹細胞自体はマウス4T1乳癌細胞とちがってPNを発現していないが、乳癌幹細胞の周辺のニッチを形成する線維芽細胞がPNを発現させており、このPNが乳癌幹細胞のWnt3aを活性化させて転移をさせていると報告されている。そこで、我々も同じ系を構築して、PN中和抗体がマウス乳癌幹細胞の転移に抑制効果があるかを検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1、PN中和抗体による悪性黒色腫の原発巣の抑制及び肺転移抑制の機序の解明を予定している。具体的には培養系におけるPN1中和抗体による遊走阻害作用を確認しているのでこの時点での遺伝子アレイを実行して遺伝子の変化を網羅的に解析する。 2、同様に、悪性黒色腫を用いてPN1中和抗体の抗原部位の合成蛋白とどのような蛋白が毛統合するかを網羅的に解析する。これによって具体歴に蛋白が同定できれば、実際にその蛋白群を購入し、直接PNと結合するか、PN1中和抗体によってその結合が阻害されるかを検討する。さらには、その遺伝子をSIを導入して作用が抑制されるかを検討する。上記の研究によってPNが他の蛋白質と結合して癌の増殖や転移に影響を与えるかを解析することが可能となる。 3、臨床サンプルを解析し、初期に外科的手術によって切除したサンプルのPNの免疫染色を実行し、数年後に転移した症例を知るマーカーになるかを検討する。乳癌幹細胞のニッチにPNが関わっているとすれば、PN陽性症例で癌幹細胞が生存することが可能になり、数年後に癌幹細胞が他臓器に転移する可能性が考えられる。 4、乳癌幹細胞をマウスから取り出しで移植する、マウス乳癌幹細胞肺移植モデルを作成し、PN1中和抗体が抑制効果を持つかを検討する。
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