研究課題/領域番号 |
24591903
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
下村 淳 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10625841)
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研究分担者 |
金 昇晋 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90346213)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 乳癌 / 家族性乳癌 / BRCA1 / BRCA2 / 変異保因者 |
研究概要 |
1.本研究でBRCA1/BRCA2遺伝子保因が判明した被験者には、乳癌および卵巣癌のリスク軽減のために、早期発見のための乳癌検診プログラム、および卵巣癌発症リスク軽減処置プログラム(希望により、6ヶ月毎の婦人科検診プログラムを受検か、卵巣癌予防のために予防的卵巣摘除を受けるかいずれかを選択)を作成した。BRCA1/BRCA2遺伝子変異検索の検査費用を研究費より補助して検索を進めることについては大阪大学研究倫理審査委員会へ、卵巣癌発症リスク軽減処置プログラムの施行については、大阪大学医学部附属病院の臨床研究審査委員会へ、いずれも平成24年中に申請していたが、平成25年3月に承認を受け被験者の登録開始が可能となった。 2.BRCA1/BRCA2遺伝子変異を有する症例の乳癌のリスクや対側乳癌の発症リスクを調査するために、これらの情報を管理するデータベースファイルを専用のコンピュータ上に作成し、個人情報保護のために厳重なセキュリティーをかけて、遺伝子変異保因が判明した症例を登録可能にした。 3.散発性乳癌の中には癌組織でBRCA1遺伝子がメチル化されてBRCA1発現が抑制されているものがあり、BRCA1遺伝子変異を持つ乳癌(BRCA1乳癌)と生物学的にも臨床病理学上も類似性があると考えられている。よって、BRCA1乳癌の臨床病理学的因子解析の一助として、過去に手術で摘出した乳癌標本に対しMSP(methylation specific PCR)法でBRCA1遺伝子のメチル化の有無を検索した。200症例中40症例にBRCA1遺伝子のメチル化を認めた。BRCA1変異乳癌の臨床病理学的因子の検討に役立つと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
乳癌および卵巣癌発症リスクに関わるゲノム上のBRCA1/BRCA2遺伝子保因を検索する研究であるため、遺伝子解析を行うことについては大阪大学医学部の研究倫理審査委員会における承認が必要であった。また、発症していない卵巣癌に対して予防的卵巣摘除というオプションがある卵巣癌発症リスク軽減処置プログラムを行うには、大阪大学医学部附属病院における臨床研究倫理委員会の承認を得ることが必要であった。いずれも厳密な審査でありしばしば申請書の修正も必要になったため、承認までにやや時間がかかることとなった。承認までの間は、症例登録のためのデータベースの作成や、BRCA1乳癌の臨床病理学的因子の検討に有用と考えられる、BRCA1メチル化症例の検索などを行っており、BRCA1/BRCA2遺伝子変異の実際の検索はこれからであるが、候補症例のピックアップは出来ており、検索を行っていくスケジュールにはある程度余裕があるため、全体としてはやや遅れている程度と考える。
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今後の研究の推進方策 |
大阪大学医学部附属病院で過去3年間に乳癌の手術を受けた通院中の患者の中で、家族歴および既往歴からBRCA1/BRCA2遺伝子の変異の可能性が高いと考えられる患者に対し、基本的に主治医より、BRCA1/BRCA2遺伝子変異の保因の可能性があることと、遺伝子検索費用の補助が可能なことを説明し本研究への登録をすすめる。年間約10例、今後2年間で約20例の乳癌術後症例の遺伝子検索を予定している。遺伝子変異が判明した症例(発端者)の家系構成員にも遺伝子変異の検索をすすめる。遺伝子変異症例は、データベースに登録し臨床病理学的因子を検討するとともに、乳癌の検診プログラム、および卵巣癌の検診プログラムまたは予防的卵巣摘除のプログラムを進めて、BRCA1/BRCA2変異のパターン、浸透率、乳癌発症率、対側乳癌発症率、検診プログラムの有用性、発見率を検討する。BRCA1遺伝子保因者については、BRCA1メチル化陽性の散発性乳癌との間で臨床病理学的因子の相関を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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