研究課題
乳癌や卵巣癌の家族歴を有する当院の乳癌術後患者に対し研究参加を呼びかけ、4例が研究参加に同意した。遺伝カウンセリングの上BRCA1/2遺伝子検査を施行し、1例にBRCA1の、2例にBRCA2の病的変異を認め当院データベースに登録した。この3例に乳癌検診プログラム(マンモグラフィとMRIを6ヶ月毎交互)と卵巣癌検診プログラム(経膣エコーとCA125腫瘍マーカーを3ヶ月毎)を開始した。BRCA1陽性例は遺伝子検査より10ヶ月目にリスク低減卵巣卵管切除術(RRSO)を受けた。現在まで全例に卵巣癌の発生や乳癌の発生および再発は認めない(遺伝子検査より8ヶ月~1年5ヶ月経過)。HBOCは本邦報告でも欧米と同程度にはあるとされ、本研究でも高い確率(4例中3例)で変異を認めた。一般にBRCA1乳癌はホルモン陰性が多いとされるが、本研究の症例は陽性であった。BRCA2の2例は陽性であり、陽性例の方が多いという他の報告に沿う結果であった。家系解析もすすめようとしたが、対象候補者が若年であることや疎遠であることより残念ながら未だ受検したものはいない。RRSOについては未施行の2例も積極的に検討する姿勢が見られた。また、BRCA1乳癌の病理学的因子解析の一助として、散発性乳癌の摘出標本においてMSP(methylation specific PCR)法でBRCA1遺伝子のプロモーターのメチル化の有無を腫瘍部と周囲正常部にて検索した。腫瘍部でメチル化有りの15例中9例は正常部でもメチル化が有ったが、腫瘍部にメチル化無しの15例は全例正常部にもメチル化無しであった。これより乳腺組織でのメチル化が乳癌の発生に関わっていると推察された。この結果はCanser Science誌に投稿し掲載された。
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Cancer Sci.
巻: Oct;105(10) ページ: 1369-76
10.1111/cas.12506. Epub 2014 Oct 1.