研究実績の概要 |
本研究の目的は、乳癌の個別化治療を目指した新しい感受性診断法の開発である。対象は、腫瘍径が3cm以上の浸潤性乳癌か、腋窩リンパ節転移を有し術前化学療法が必要と考えられる原発性乳癌患者。術前化学療法施前に吸引補助下針生検を行い乳癌組織の採取を行い、乳癌組織中のエストロゲン受容体 (ER)、プロゲステロン受容体 (PR)、human epidermal growth factor receptor 2 (HER2)、Ki-67 labelling index、Cell Cycle Profiling (C2P)法によるC2P-risk score (C2P-RS) の測定や、マイクロアレイを用いた多遺伝子発現解析を行った。また、血中のメチル化DNAと総DNA量も測定を行った。さらに、化学療法前に乳房造影MRI検査を行い腫瘍の画像診断を行った。術前化学療法は、paclitaxel (80 mg/m2, weekly, 12回) → FEC (500/75/500 mg/m2, q3w, 4回)を施行した。Outcomeとして、手術標本での病理組織学的完全奏功(pCR)を用いた。pCRと臨床病理学的因子や各バイオマーカーとの相関について検討を行った。 検討の結果、多遺伝子発現解析において、intrinsic subtypeが強いpCR予測因子であったが、免疫系の23遺伝子の発現から非常に高い確率でpCRを予測することが出来ることが明らかとなった。また血中メチル化DNAや、総DNA量はpCRの予測因子になりえなかったが、non-pCR症例において両マーカーは予後不良の予測因子であった。さらに、化学療法前に撮影した造影MRI検査における乳癌の形態分類(round + oval vs. irregular)も、pCRの有力な予測因子であることが明らかとなった。また、この形態分類は、ERやHER2等と組み合わせるとさらに予測診断能が向上することが示された。
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