研究実績の概要 |
前回までに行った乳癌および大腸癌の細胞株にMACC1遺伝子導入した細胞株を用いて、細胞形態、増殖能、遊走能の変化を検討した。MACC1遺伝子を細胞へ導入した際の形態学的な変化は、大腸癌細胞株、乳癌細胞株いずれにおいても見られなかった。同様に、増殖能に関しても、いずれの細胞株でもコントロール群、MACC1導入群で有意差は見られなかった。一方遊走能に関しては、MDA-MB-231ではコントロール群、MACC1導入群で有意差は見られなかったが、SW480では、MACC1導入群で有意な遊走能の亢進を認めた。次いでHGF刺激によるcMet発現の変化を検討した。SW480においては、controlに比べ、MACC1を導入した細胞で、HGF投与24時間後に更にcMet発現が上昇した。一方、MCF7においては、MACC1導入やHGF投与の有無に関わらず、cMet発現の変化は見られなかった。 上記の結果から、乳癌では大腸癌と異なり、MACC1がcMetのpromoterに結合していない可能性が示唆された。ChIP法を用いてMACC1のcMet promoterへの結合状況について検討した。MCF7では、コントロール、MACC1導入細胞いずれにおいてもMACC1のcMet promoterへの結合は見られなかった。これに対し、SW480ではMACC1を導入した細胞でバンドが検出され、MACC1のcMet promoterへの結合が示唆された。以上より、MACC1の癌での役割は乳癌と大腸癌では異なることを確認した。 3年間の研究成果を論文としてまとめInternational Journal of Oncologyに投稿し、採択され、掲載された。(Sueta A, Yamamoto Y et al Diffenetial role of MACC1 expression and its regulation of the HGF/c-Met pathway betweeen breast and colorectal cancer. Int J Oncol 46:2143-2153,2015)
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