研究課題/領域番号 |
24591912
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
石本 崇胤 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 特任助教 (00594889)
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研究分担者 |
岩槻 政晃 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (50452777)
別府 透 熊本大学, 医学部附属病院, 特任教授 (70301372)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 癌幹細胞 / CD44 / 活性酸素 / 治療抵抗性 |
研究概要 |
これまでの研究で、申請者らはCD44vがシスチントランスポーターのサブユニットであるxCTタンパク質と相互作用し安定化することで、細胞外からのシスチンの取り込みを増大させると共に、主要な抗酸化物質である還元グルタチオンの産生を高め、癌細胞の抗酸化能を亢進させることを見出している。今回の研究において、シスチントランスポーターの特異的阻害剤であるスルファサラジンには、肺転移巣の形成や腫瘍増大を抑制すると共に抗癌剤感受性を向上させる効果があることを見出した。しかし、xCT阻害剤が、癌幹細胞様の腫瘍細胞に対して選択的に効果を有するかについては不明瞭なままであった。そこで、頭頸部扁平上皮癌細胞におけるCD44v-xCTによる酸化還元状態制御機構の意義を明らかにすると共に、xCT阻害剤が、CD44v陽性腫瘍細胞を選択的に標的とするかについて生体レベルで検討した。その結果、頭頸部扁平上皮癌細胞においてはxCT阻害剤による細胞増殖抑制効果はCD44vの発現量と相関し、CD44v発現が高い癌細胞は、低い細胞と比較してxCT活性への依存性が高いことが分かった。また、担癌マウスにおけるスルファサラジン治療は、選択的にCD44v陽性腫瘍細胞にアポトーシスを誘導するものの、CD44v陰性細胞にはほとんど影響しないことが分かった。一方、スルファサラジン感受性が低いCD44v 陰性腫瘍細胞では、上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor : EGFR)の活性化を示し、xCTの活性よりもEGFRの活性に依存することが分かった。以上より、xCTを標的とした治療はCD44v陽性の未分化な癌細胞を、EGFRを標的とする治療はCD44v陰性の分化した癌細胞を標的とすることが明らかとなり、両者を併用することで、より効果的な治療法を開発できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に基づいて研究を遂行しており、得られた研究成果を学会発表ならびに科学研究誌へ報告している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果からCD44v発現が高い癌細胞は、低い細胞と比較してxCT活性への依存性が高いことが明らかになり、xCT阻害剤による細胞増殖抑制効果はCD44vの発現量と相関することが示された。今回の結果から、癌細胞においてCD44vが高発現するメカニズムを明らかにすることで、xCT阻害剤だけでなく新たな治療標的を創出するための解析を進めていく。また申請者らは、これまで胃癌モデルマウス(トランスジェニックマウス)を用いた解析にてマウス胃がん細胞はCD44を高発現することを示してきた。この胃癌自然発症モデルマウスであるK19-Wnt1/C2mEマウスにおいてxCT阻害剤による治療効果について評価をおこなう。このマウスは自然発症胃癌モデルであり、これまでの解析から20週齢から30週齢にかけて腫瘍が急速に増大することを確認しているので、この時期に阻害剤の投与をおこなうことで治療効果を評価するとともに、20週齢以前に阻害剤の投与をおこなうことで腫瘍の予防効果についての評価も行う予定である。得られる結果はXenograft modelに比べて自然発癌における治療効果の検証が可能であり、臨床応用へ向けた礎となり得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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