研究課題
これまでの研究結果から、腫瘍増大および転移巣形成においてCD44vはシスチントランスポーターであるxCTタンパク質との相互作用により癌細胞の酸化ストレス抵抗性を亢進させることを見出した。今回、申請者らは消化器癌患者の末梢血中に存在するCTC(circulating tumor cell)の分離をおこない、免疫不全マウスへの移植継代をおこなった。腫瘍の細胞分画解析の結果、CD44陽性CTCはxenograft modelにおける腫瘍形成能が高い事ならびに循環癌細胞であるCTCにおいてもCD44/xCT相互作用が重要な機能を果たすことを示した。また、これまで明らかになっていないCD44発現制御メカニズムとしてmicroRNAに注目し、miRNA PCR Arrayを用いた網羅的解析によりCD44発現を制御するmicroRNAとしてmiR-328を見出した。更に腫瘍間質中に存在するマクロファージが産生する活性酸素により癌細胞のmiR-328発現が低下、その結果CD44発現が誘導される事を明らかにした。この発現制御メカニズムを介して高発現するCD44は癌幹細胞としての性質獲得や維持に働いているだけでなく、胃癌の背景粘膜である化生胃粘膜上皮においても高発現しており、ヘリコバクターピロリを介した胃癌の発癌過程にも深く関わる可能性が示された。今年度の研究成果並びに前年度までの胃癌自然発症マウスモデルを用いた解析結果からCD44は消化器癌の発癌から転移巣形成の過程で、多くのステップに関与しており癌治療・予防における治療標的としての意義が大きい事が示唆された。
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Carcinogenesis
巻: 35(5) ページ: 1003-11
10.1093/carcin/bgt402