研究課題/領域番号 |
24591914
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
前川 二郎 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70244449)
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研究分担者 |
矢吹 雄一郎 横浜市立大学, 附属病院, 指導診療医 (30610357)
安村 和則 横浜市立大学, 市民総合医療センター, 助教 (40351621)
友枝 裕人 横浜市立大学, 附属病院, 指導診療医 (40423553)
廣冨 浩一 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (90368324)
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キーワード | リンパ浮腫 / 空気圧マッサージ / 圧測定 / リンパマッサージ |
研究概要 |
4年度研究でマッサージ器カフと皮膚の接触が一様でないことが判明し、カフが効果的に皮膚に接触できるよう、足底形状に合わせたソフトマテリアル補助具を作製し被検者足底にあて、ICG蛍光リンパ管造影下にリンパの流れを確認したが、期待したリンパの流れを得ることができないことが判明した.原因はカフの素材(透明であるため塩化ビニールで柔軟性に欠ける)とカフの形状(下肢の断面が楕円形に対し1室3つのカフが三角形状に囲み圧迫する)と考え、カフと装具をセットで圧迫を工夫することが今後の課題である.また、加圧パターンの違いで皮下リンパを有効に流すことが可能と考え、輝度測定ソフト(ROI)を使い加圧時の輝度変化を傾き(slope)の絶対値として比較検討を健常人下肢22肢で行った。加圧時のslopeは同時加圧パターンで平均0.8±1.0程度、末梢から順次加圧するパターンで平均0.88±1.2程度と順次加圧パターンで輝度変化がやや強く、リンパ流速が得られる可能性がある.この検討で、減圧時にも加圧時と同じ大きな輝度変化が生じることを発見した.また、下肢リンパ浮腫患者20例に対し、SPECT-CTリンパシンチを施行して患肢リンパの3次元的な流れを画像で評価した.結果、表在リンパ管(S)と深部リンパ管(D)をリンパが流れることを発見し、S優位、D優位、SとDほぼ同じタイプの浮腫があることが分かり、それぞれ空気圧マッサージ施行前後で、皮膚硬度測定器とICG蛍光リンパ管造影で有効性(皮下の弾性変化と皮下を流れるリンパの変化)を検証したが、皮膚硬度(皮下組織の変化率)では大きな差を認めなかった.ICG検査においても基本的なICGパターンの変化はなく空気圧マッサージ器によるICG検査の画像での影響はないと考えられた.また、24,25年度で得られた結果の一部をローマで行われた第24回国際リンパ学会で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1,22例の健常人下肢において、加圧パターンの違いでICG蛍 光リンパ管造影下にリンパの流れを確認し、ある面積の輝度変化を輝度測定ソフトROIを用い計測し、輝度の変化すなわち傾き(slope)の絶対値の大きさをリンパ流の早さとして比較検討することができた.結果は、健常人の下肢において、一気にカフ6室が加圧されるハイパーモードすなわち同時加圧パターンで平均0.8±1.0程度、スクイーズモードすなわち末梢から順次加圧パターンで平均0.88±1.2程度と順次加圧パターンに輝度変化がやや強く、効果的なリンパ流速が得られると考えた. 2,マッサージ器のカフと皮膚との接触具合が一様でないことから、空気圧マッサージ器が足のリンパ管を効果的に圧迫できるよう、足底形状に合わせたパッド(ソフトマテリアル)を作製し、空気圧マッサージ効果の差異について健常人5例に対しICG赤外線蛍光リンパ造影の検討を行った.結果は、加圧時に輝度変化すなわちリンパの流れを得ることができなかった.原因はカフの素材(透明な塩化ビニールで柔軟性に欠ける)とカフの形状(下肢断面が楕円形に対し1室3つのカフが三角形状に囲み圧迫する)と考え、カフと装具をセットで圧迫を工夫することが今後の課題である. 3,リンパ浮腫患者20例においてリンパシンチSPECT―CTを施行して患肢におけるリンパの3次元的な流れを画像で評価した.この結果、表在リンパ優位(S)、深リンパ優位(D)、SとDほぼ同じタイプの浮腫があることが分かり、それぞれ空気圧マッサージ施行前後で、皮膚硬度測定器とICG蛍光リンパ管造影で有効性(皮下の弾性変化と皮下を流れるリンパの変化)を検証したが、皮膚硬度では大きな差を認めず、ICG検査においても基本的なICGパターンの変化はなかった. 4,得られた結果を第37回日本リンパ学会、第24回国際リンパ学会で発表した.
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今後の研究の推進方策 |
圧迫パターンは末梢から順次加圧するパターンがより効果的にリンパを送ることができると思われ、下肢リンパ浮腫に表在リンパ優位(S)、深リンパ優位(D)と、SとDほぼ同じタイプの浮腫があることが分かったので、次年度は表在リンパ優位のリンパ浮腫症例において、空気圧マッサージ器用透明カフを用いて、表在のリンパ流の変化を直接、ICG蛍光リンパ造影により、その輝度変化を求める.これにより、リンパ浮腫症例のSPECT-CTリンパシンチ画像を基にした空気圧マッサージ器の適応が明らかになる.次に、カフ素材と形状について、足部の圧迫が下肢のリンパ流促進に有効であるため、足部全体に密着する素材と、さらに足部のカフ形状は、小さくかつ多数にしてより均一に圧迫できるようなカフの設計が可能か検討を行う.
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