本研究は、エストロゲン・レセプター(ER)陰性・プロゲステロン・レセプター(PgR)陰性・HER2陰性の、いわゆるトリプルネガティブ(TN)乳癌において、特徴的に高発現している低酸素関連「マイクロRNA」に着目し、TN乳癌に対する新規治療薬の開発を目指した研究である。具体的には、低酸素関連「マイクロRNA(miR)-210」をノックダウンしたTN乳癌に化学療法を行うことにより、化学療法抵抗性のTN乳癌に対する化学療法感受性の増強、すなわち、化学療法増感薬としての「miR-210ノックダウン療法」の意義について検討する。 乳癌組織からRNAを抽出し、乳癌組織におけるmiR-210発現を検討した(161例:トリプルネガティブ乳癌58例、ER陽性HER2陰性乳癌103例)。その結果、トリプルネガティブ乳癌におけるmiR-210発現は、ER陽性HER2陰性乳癌と比較して有意に高く、トリプルネガティブ乳癌のなかでmiR-210の発現の高い症例は低発現症例と比較して予後不良であった。多変量解析の結果、miR-210高発現はトリプルネガティブ乳癌において独立した予後不良因子であった。
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