• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

薬剤反応性タンパク質定量に基づく抗癌剤感受性試験

研究課題

研究課題/領域番号 24591917
研究種目

基盤研究(C)

研究機関岩手医科大学

研究代表者

肥田 圭介  岩手医科大学, 医学部, 講師 (10285596)

研究分担者 若林 剛  岩手医科大学, 医学部, 教授 (50175064)
西塚 哲  岩手医科大学, 医学部, 講師 (50453311)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード抗癌剤感受性 / バイオマーカー / タンパク動態モニタリング
研究概要

新規抗癌剤感受性試験を確立するために以下のような実験・観察を行った。
(1)抗癌剤反応性タンパクの高次データモニタリング:培養細胞系を用いた試験管内モデルを用いて薬剤反応後のタンパク変化を追跡するシステムを確立した。本研究室で行っているライセートアレイ技術は多数の細胞サンプルをスライド上に集積しタンパク発現を定量的に解析するもので、薬剤添加に対応して38%のタンパクは上昇、32%のタンパクは低下を示した。明らかな変化を示さないタンパクも30%あった。アポトーシスが誘導される条件で細胞骨格タンパクとアポトーシス関連タンパクの発現動態の類似性が増加していた。また薬剤投与法に応じて細胞増殖に関わるタンパクと他のタンパクの類似性が増加していた。
(2)抗癌剤による癌細胞集団交代現象の観察:高度進行・再発胃癌43例を対象とし、薬剤と細胞生存率のdose-response curveを考慮したWST法による細胞増殖アッセイにより検討した。各アッセイにおいて抗がん剤感受性が期待できるものからの期待順位によりその効果予測を行った。タキサン系薬剤の期待順位は高く、5-FUおよびシスプラチンは低い傾向があった。期待順位の低かった腫瘍の約半数は過去にこれら2剤による化学療法を施行されていた。また、期待順位の高い薬剤で治療された後に再発を来した症例では治療に用いた薬剤でのみ選択的にdose-response curveのパターンが変化していた。
(3)胃癌術後化学療法効果予測マーカーNF-kB:胃癌においてNF-kB陽性の腫瘍は再発率においてハザード比が11.6倍であった。胃癌細胞株に5-FUを添加するとNF-kBが活性化されており、他のストレス反応タンパクであるp53の下流遺伝子をp53自体よりも強力に制御している可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

タンパクの高次データによるモニタリングのために、培養細胞に5FU、CIS(cisplatin)、およびCPT(CPT-11)を3種類の濃度、2種類の投与法で添加し、37種類のタンパクについてその変化を24時間の時系列に従って細胞を回収し調整後直径100ミクロンのドットとしてニトロセルロース膜に転写しライセートアレイを作製、特異的抗体を用いた色素法による免疫染色でそのタンパク量を推定した。培養細胞により細胞採取からデータ出力までを確立した(Nishizuka et al, 論文投稿中)。ヒト癌細胞による感受性試験に向けて整備を進めたい。
抗癌剤感受性試験のための細胞アッセイについても定量性に関しての見直しを進めてきたが、前述のdose-response curveを考慮したWST法により、①アッセイ品質の担保、②アッセイスケールダウンによる定量性の確保、③高度進行・再発癌を対象とした治療指針の提供、というシステムを確立することができた(Matsuo et al, World J Surg Oncol, 2012)。
臨床検体を用いる以上、その抗癌剤治療後の予後を追跡することは必須である。臨床データの追跡プロセスおよびライセートアレイ技術確立の過程で、培養細胞パネルの薬剤感受性とタンパク発現の組み合わせから5-FU感受性に関する2つのバイオマーカーを同定した(Ishida et al, PLoS ONE, 2012)。

今後の研究の推進方策

タンパク発現のモニタリングに関しては、各薬剤によるタンパク変動の変化をデータベース化し多剤併用時のsynergyについて迅速検索可能なシステムを構築したい。試行回数の限られる臨床検体のアッセイには参考となるデータベースの確立が急務である。
新規抗癌剤感受性判定法に関しては論文発表を完了した。抗癌剤感受性試験は本研究継続中に医療保険収載となった。高度進行・再発症例に対する薬剤選択法として更なる確立を目指したい。
バイオマーカー探索に関しては、論文発表を終了した。また、多施設共同の後ろ向き試験の症例登録を開始した。500例以上の手術検体を用いて免疫染色を行い臨床的有用性について検証する予定である。

次年度の研究費の使用計画

抗癌剤感受性判定にともなうライセートアレイ作製に必要な経費を計上した。主に試薬(免疫染色用のもの)および消耗品(ライセートアレイを作製するためのニトロセルロース膜など)が主たる購入対象となる。現在までに完了している抗癌剤反応性タンパクの高次データモニタリングシステムを臨床検体に応用し抗癌剤による変化をいち早くとらえることができるマーカータンパクの同定を目指す。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Evaluation of chemosensitivity prediction using quantitative dose-response curve classification for highly advanced/relapsed gastric cancer2012

    • 著者名/発表者名
      Matsuo T, Nishizuka SS, Ishida S, Endo F, Katagiri H, Kume K, Ikeda M, Koeda K, Wakabayashi G
    • 雑誌名

      World Journal of Surgical Oncology

      巻: 11 ページ: 11

    • DOI

      10.1186/1477-7819-11-11

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Molecular Marker Identification for Relapse Prediction in 5-FU-Based Adjuvant Chemotherapy in Gastric and Colorectal Cancers2012

    • 著者名/発表者名
      Ishida K, Nishizuka S, Koeda K, Wakabayashi G, et al.
    • 雑誌名

      PLOS PNE

      巻: 7 ページ: e43236

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0043236

    • 査読あり
  • [学会発表] 胃癌術後補助化学療法における5-FU効果予測因子としてのNF-κBの検討2013

    • 著者名/発表者名
      遠藤史隆, 西塚 哲, 石田和茂, 久米浩平, 片桐弘勝, 石田 馨, 岩谷 岳, 藤原久貴, 肥田圭介, 若林 剛
    • 学会等名
      第85回日本胃癌学会
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      20130227-20130301
  • [学会発表] 術後補助化学療法効果予測マーカーの同定とその生物学的意義の検証2012

    • 著者名/発表者名
      西塚 哲, 遠藤史隆, 石田和茂, 久米浩平, 片桐弘勝, 松尾鉄平, 大塚幸喜, 肥田圭介, 佐々木章, 若林 剛
    • 学会等名
      第67回日本消化器外科学会
    • 発表場所
      富山
    • 年月日
      20120718-20120720

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi