研究課題/領域番号 |
24591917
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
肥田 圭介 岩手医科大学, 医学部, 講師 (10285596)
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研究分担者 |
若林 剛 岩手医科大学, 医学部, 教授 (50175064)
西塚 哲 岩手医科大学, 医学部, 講師 (50453311)
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キーワード | 抗癌剤耐性 |
研究概要 |
当初の予定であった初代培養細胞からの分子生物学的な展開に関しては、高度進行胃癌の抗癌剤感受性試験症例が減少したため(年間数例)、症例集積が進んでいない。少ない症例数ながら、胃癌細胞株パネルから抽出した抗癌剤抵抗性に関連するタンパク質を腹膜播種症例で検討した。細胞株を用いた実験では、抗癌剤耐性にはPI3Kを中心とした増殖シグナルに関連するタンパク質が重要と思われたが、胃癌腹膜播種症例では著名といえる変化は認められなかった。実際、実験を進めていくとPI3Kタンパクの増強は、抗癌剤に不応性の集団に見られることがわかったが、その集団の選択にはタンパク発現ではなく転写制御のレベルのイベントが重要であることが示唆された。これにより現在の研究は、細胞集団の選択に必要な分子機構を阻害する化合物のスクリーニングへ徐々にシフトしている。一方で、ヒト胃癌細胞株の樹立、およびSCIDマウスを用いたヒト胃癌細胞株を用いた原発胃癌モデル、腹膜播種モデルをそれぞれ作製し、平行して抗腫瘍効果のある物質のスクリーニングを開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
抗癌剤感受性試験の対象となる高度進行胃癌症例の集積が進んでいないことから、ヒト胃癌細胞株を用いたスクリーニング系かた抽出した情報を基に研究を進めている。抗癌剤抵抗性細胞集団とPI3K発現の関係を検討した結果、転写レベルでの細胞集団選択を示唆する所見を得た。これは当初予想していなかったことであり、現在この薬剤選択性を阻害する化合物スクリーニングへと研究の方向性がシフトしてきている。
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今後の研究の推進方策 |
薬剤により耐性細胞集団が選択されることは「癌細胞」が集団と個で生物学的な振る舞いが異なる事実に基づき研究を進める必要がある。現在まで、この細胞集団選択に関わる機序が当初目的としていたタンパク質分画ではなく、転写レベルの制御であることを突き止めつつあり、特に抗癌剤治療後の腹膜播種再発の生物学的仕組みを明らかにできる可能性がある。現在は阻害剤を中心とした実験を継続しているが、将来的には治癒切除後の再発確率の高い群を同定し、適切な予防につなげる研究を目指したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
使用を予定していた試薬の使用頻度が予想より低く、購入が遅れたため。 試験管内の実験比重が増えたため定期的に試薬を使用できると思われる。
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