研究課題/領域番号 |
24591920
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大江 賢治 京都大学, 健康長寿社会の総合医療開発ユニット, 講師 (30419527)
|
研究分担者 |
内海 俊明 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (10176711)
|
キーワード | RNAスプライシング / 乳癌 |
研究概要 |
本研究は、ホルモン抵抗性乳癌の発症機序の解明、治療の開発を目標としている。われわは、MCF-7乳癌細胞において、癌遺伝子産物HMGA1aの配列特異的RNA結合によりエストロゲン受容体の選択的スプライシングに深く関わっていることを見つけ、短鎖RNAにより選択的スプライシング改変、すなわち治療の可能性について検討している。現在まで、HMGA1aは、ERα46というERαアイソフォームの選択的スプライシングに関与していることを見出し、スプライシングに必須なU1snRNPが関与している詳細な機序を解明した。また、HMGA1aの「おとり核移行RNA」の安定発現MCF-7乳癌細胞株をヌードマウスに移植したところ、移植細胞の増殖を促進する結果を得た。しかし、ヌードマウス移植組織を調べたところ、HMGA1aの「おとり核移行RNA」の発現によりHMGA1aの発現が増加し、それとともに選択的スプライシングによりERα全長mRNAが減少、ERα46 mRNAが増加していた。何らかのフィードバック機構が考えられるが、miRの発現を検証したところ、MCF-7細胞においてエストロゲンに応答するmiR-21の発現は変化せず、トリプルネガティブ乳癌に高発現するmiR-16の発現の低下傾向を認めた。さらにpri-miR-16の配列を調べたところ、HMGA1aのRNA結合配列に一部似た配列があった。miR-16は、HMGA1aを標的とすることがわかっており、miR-16がHMGA1aのフィードバック機構を担っていることが考えられ、検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HMGA1a が、ERα46というERαアイソフォームの選択的スプライシングに関与していることを見出し、スプライシングに必須なU1snRNPが関与している詳細な機序を解明した。治療戦略として、HMGA1aの「おとり核移行RNA」の影響を安定発現MCF-7乳癌細胞株のヌードマウス移植組織を調べたところ、予想に反して、HMGA1aの「おとり核移行RNA」の発現によりHMGA1aの発現が増加し、それとともに選択的スプライシングによりERα46 mRNAが増加していた。ERα46蛋白の増加は見られず、むしろ、ERα全長mRNAの減少によるERα全長蛋白の減少を認めた。ERα全長蛋白の減少の原因として、HMGA1aによるmiR16の発現制御・フィードバック機構を解析している。現在、この仮説を追究している。
|
今後の研究の推進方策 |
HMGA1aの「おとり核移行RNA」の安定発現MCF-7乳癌細胞株のヌードマウス移植腫瘍は、コントロールに比べ増大傾向を示し、当初の仮説と逆の結果を得た。しかし、miRNAを介したフィードバック機構の存在が示唆され、ERα陰性化の一因になっていることが考えられた。 今後の研究の推進方策として、 1. HMGA1aの「おとり核移行RNA」安定発現MCF-7乳癌細胞株のヌードマウス移植腫瘍増殖増強の結果までを論文投稿する。 2. miR-16が関与するHMGA1aのフィードバック機構に関して、pri-miR-16の配列にHMGA1aが実際に結合するかどうか、RNAゲルシフト等にて確認する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初は、実験用動物を使用予定であったが、研究の推進方策変更のため、HMGA1aとmiR-22の関連の研究に費用をあてる。 次年度は、HMGA1aとmiR-22の関連を研究したいので、消耗品費は実験用動物を除く、薬品類、酵素・キット類、ラジオアイソトープ類、プラスチック用品、ガラス器具に当てたい。
|