研究課題/領域番号 |
24591924
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪保健医療大学 |
研究代表者 |
柴田 雅朗 大阪保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (10319543)
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研究分担者 |
日下部 守昭 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (60153277)
森本 純司 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (90145889)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 乳癌 / テネイシン抗体 / マンゴスチン / 転移 / 治療 |
研究概要 |
【目的】抗体医薬が効果を示す癌腫は限定的で、固形癌に対する抗腫瘍効果は十分ではない。その理由は固形癌では異常シグナル経路が複雑で、迂回路も存在するからである。そこで抗体医薬と低分子薬との複合治療を行い、2つの薬剤の複合により異なった癌の増殖・転移を担うシグナル伝達経路網を標的とするアプローチを試みた。 【方法】高転移性乳癌細胞株(BJMC3879Luc2)をマウスに移植し、2週間後にテネイシンC抗体(125μg、週1回、腹腔内投与)、α-マンゴスチン(4000 ppm, 混餌投与)と両者の組み合わせ投与を実施した。なお、対照群は生理食塩水のみを投与した。投与開始の6週経過後に実験を終了し、全生存動物を屠殺・剖検した。 【結果】体重では対照群と各群との間に明らかな差異は観察されなかった。経時的な腫瘍体積では対照群と比較して、全ての治療群で実験開始の1週より実験終了の6週まで有意な抑制が観察された。テネイシン抗体の腫瘍への集積性を近赤外線プローブを用いて観察した結果、腫瘍組織に局所的に強い集積性が認められた。病理組織学的検索では、リンパ節転移および肺転移は、対照群と比較して、全ての治療群で有意な低下をもたらした。【結論】高転移性マウス乳癌モデルに対して、テネイシンC抗体あるいはα-マンゴスチンは腫瘍増殖の抑制作用と転移抑制作用を発揮したが、両者を複合することによる明らかな抗腫瘍作用の増強効果は示されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度の研究実施計画で挙げられていた実験は全て遂行した。そのうち、近赤外線プローブを用いて、テネイシン抗体の腫瘍への集積性を観察した点は、本実験遂行への意味付けをもたらした。当初の研究実施計画では「マウス乳癌モデルを用いた転移抑制実験」の動物実験までを行い、病理組織学的解析は平成25年度の実施予定であったが、前倒しで行い、「病理組織学的解析」の転移の検索まで終了した。その結果、本年度でテネイシン抗体およびα-マンゴスチンのそれぞれ単独投与でリンパ節転移と肺転移の抑制をもたらしたことを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度実施の「マウス乳癌モデルを用いた転移抑制実験」にて得られた病理組織標本を用いて、腫瘍内の血管新生 (CD31)、リンパ管新生 (podoplaninやLyve-1)、腫瘍細胞のDNA合成能 (BrdU標識率)およびアポトーシス (ssDNA)を免疫組織染色を施して、定量的に解析してゆく。また、分子生物学的解析として、テネイシンCの発現、リンパ管新生に関わるLyve-1やProx-1、増殖に関わる遺伝子群など、プライマーアレイの手法で解析してゆく。また、抗体アレイを用いてリン酸化についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
免疫組織染色を行うための種々の抗体(CD31、podoplanin、Lyve-1、Prox-1、Brdu、ssDNA、テネイシンC)を購入する。増殖に関わる遺伝子群を網羅的に解析するためのプライマーアレイ、Real-time PCRのために必要な試薬を購入する。また、リン酸化を検討するために抗体アレイもしくは抗体を購入する。
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